月明かりに浮かぶ
眠りにつくかどうかの
夢か現かの間のときに
不思議な光景を見たの
電気を消した真っ暗なはずの部屋で
開け放した掃き出し窓のそばに座り
電子タバコ片手に外を眺めるあなた
たぶん実際は街灯のせいだろうけど
満月の夜煌々とした月明かりの中に
あなたが包みこまれているみたいだ
その佇まいをわたしは部屋の中から
目を覚まして見とれているという幻
この場所から逃げ出したいと
その術を探しては考え抜いて
現実との板挟みで揺らぐ毎日
夢か現か募らせ過ぎた願望が
見せた幻だったのだろうけど
月明かりが部屋の中までも照らして
目覚めたわたしに気付いたあなたが
こちらを見てにこりと微笑んでから
「起きた?」「うん」くらいの会話
そしてあなたは無言で自分の右隣を
とんとんと叩いておいでと合図する
わたしはくるまっていた布団を除け
あなたは右手をわたしに差し出して
見えたのはそこまで
今日は満月らしいから
夜はよく晴れるといい
十五夜も重なったから
煌々と月が出るといい
夢か現かのあの光景も
今夜現実になればいい
電気を消した真っ暗なはずの部屋で
満月の夜煌々とした月明かりの中に
月明かりが部屋の中までも照らして
そしてあなたは無言で自分の右隣を
月明かりに浮かぶあなたが
差し出すその手を今夜なら
夢か現か幻かなど関係なく
わたしも握れると思うから