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古事記考察②婚姻で読み解く『欠史八代』

※こちらの古事記考察は独自解釈になります。

≪ここまでの流れ≫ 
 二代・三代天皇の婚姻を経て生まれた大倭の四代天皇。四代天皇の子として日向で育てられた五代天皇は、大和の知識を持って日向の目的のために動き出す。
(大和の知識とは何かについての考察もあるのですが、話がややこしくなるのでここではとばします。いずれ書きたいと思います。)

 五代天皇は、師木とは関係のない婚姻をする。この婚姻を読み解く鍵となるのが、最初にあげた仮説、
 ・女性は土地を移動しない。
である。新たな婚姻は、新たな地で現地の女性を娶ったことを表す。現地の女性と言っても誰でも良いわけではない。その地を治める長の妹や娘だ。

 五代天皇の婚姻を見てみよう。「奥津余曾」の妹、「余曾多本毘売命」を娶っている。これは奥津余曾の国へ行ったことを意味している。
 この奥津余曾(オキツヨソ)の国を、仮に【オキ】とする。ツは格助詞「の」と同じであるから、【オキ】のヨソさんという解釈だ。

 五代天皇と余曾多本毘売命の間には「天押帯日子命」と六代天皇が生まれている。
 大倭を継いだのが六代天皇だ。天押帯日子命は春日臣、小野臣、柿本臣など多くの氏族の祖とされている。おそらく天押帯日子命は【オキ】で子孫を増やしていったのだろう。

 六代天皇は姪を娶ったというから、天押帯日子命の娘を娶ったことになる。生まれたのが、「大吉備諸進命」と七代天皇だ。
 天押帯日子命が【オキ】の女性を娶って子孫を増やしていれば、天押帯日子命の娘も【オキ】にいることになり、六代天皇につづき、七代天皇も【オキ】で生まれたことになる。

 七代天皇はさらに新たな婚姻をする。
 十市県主の祖・大目の娘、「細比売命」を娶ったのだ。これも五代天皇と同じく、新たな地へ行ったためと考えられる。
 この地を仮に【十市】とする。

 新たな地【オキ】に行った五代天皇は、二人の男子を得て、ひとりに【オキ】で新たな血筋を作らせ、ひとりに大倭を継がせている。
 おそらく、七代天皇も細比売命との間に二人の男子が欲しかったにちがいない。ところが、子は一人しか生まれなかった。これは、細比売命が亡くなってしまったためと考えられる。

 困った七代天皇がどうしたか。婚姻を見てみよう。
 七代天皇は、細比売命のほかに、「大倭国阿禮比売命」を娶っている。大倭の名を冠したこの女性は、血筋がしっかりと書き残されている。三代天皇の子・師木津日子命の子・和知都美命の娘だ。
 師木の血をひく娘に大倭の名を冠したのは、彼女に大事な任務があったためだろう。

 それが、【十市】に行くという使命だ。
 ・女性は土地を移動しない。
という原則を破って、大倭国阿禮比売命は【十市】に行くことになったのではないだろうか。
 大倭国阿禮比売命と七代天皇は【十市】で子を生し、ヤマトトモモソビメ命や大吉備津日子命らが生まれた。

 七代天皇と細比売命との間に生まれた子は八代天皇となった。八代天皇の婚姻にもまた、重要な意味がある。
                           【続く】

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