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古事記考察⑤アマテラス・ツクヨミ・スサノオ

※こちらの古事記考察は独自解釈になります。

≪ここまでの流れ≫
 大倭の血筋を作り、【オキ】と【十市】を治めようとしてきた天皇たち(【オキ】と【十市】は仮の地名)。
 【オキ】は天押帯日子命が治め、【十市】には内色許男命とともに作った国と日子坐王が治める国の二つができた。

 こうして【オキ】と【十市】に三つの国ができた。これが、黄泉の国から戻ったイザナキが生んだ三貴子である。

 アマテラス国=【オキ】の国。天押帯日子命を祖とする『アメ』一族が治める。
 ツクヨミ国=【十市】の半分。八代天皇と内色許男命の協議でできた国。大毘古命が治める。
 スサノオ国=【十市】の半分。日子坐王を祖とする国。

 古事記の神話では、三貴子が誕生したのち、ツクヨミはほとんど登場しない。一方で、天皇の事績は十代天皇以降詳細になる。
 このことから、神話はアマテラス国視点を中心として、事績はツクヨミ国視点を中心として書かれていると考えることができる。
 イザナキが左目を洗って生まれたのがアマテラス、右目を洗って生まれたのがツクヨミであるが、まさに古事記はふたつの視点で書かれているのだ。左右の目が見るものは少しずれているが、合わせれば立体的な像を結ぶことができる。

 ツクヨミ国にとっては十代天皇以前の天皇についてはよく分からないので、伝えられる系譜そのままに『欠史八代』となったと思われる。
 だが、十代天皇以前の出来事について、ツクヨミ国が知っていることもある。内色許男命がかかわった部分だ。
 すなわち『【十市】に来た七代天皇たちが内色許男命の軍と戦いになり、双方は協定を結んだ。八代天皇が内色許男命の妹と婚姻し、内色許男命がヤマトトモモソビメ命を娶った。両方の血筋を合わせて十代天皇が生まれ、ツクヨミ国は大毘古命が治めた』ということだ。
 ツクヨミ国は、この十代天皇以前の話を初代神武天皇としてまとめた。

 ここで、今まで後回しにしていた神武天皇について見ていく。

 神武天皇は兄と一緒に動きだす。この兄は七代天皇の兄、大吉備諸進命であろう。一般的に神武天皇は日向から大和に向かったと思われているが、それは本来の始まりである波延の足跡だ。古事記に書かれた神武天皇のルートは、日向から宇佐、筑紫、安芸、吉備へ移動し、ひと区切りとなる。
 兄の大吉備諸進命、そして子・大吉備津日子命のように、七代天皇の周りには吉備の名が多い。七代天皇たちは、【十市】平定のために吉備に向かったと考えられる。

 兄はナガスネヒコの弓矢を受けて亡くなる。これまでの解釈と合わせて考えると、これはアメノワカヒコの死だ。アメノホヒ、アメノワカヒコの区別は内色許男命側からは分からないため、兄の話とされたのだろう。
 ここで、神武天皇軍は一度消息を絶つ。これはアメノワカヒコの死後、【十市】の『アメ』一族が途絶えたことを表している。

 そこから太刀が渡されて復活するのは、十拳剣を持った大吉備津日子命の登場を示している。大吉備津日子命の活躍で、戦いは交渉へとたどり着いた。
 交渉をまとめた八代天皇がニギハヤヒだ。ニギハヤヒはトミビコの妹を娶ってウマシマジを生んでいる。交渉に応じたトミビコが内色許男命で、ウマシマジが大毘古命だろう。

 その後、ヒメタタライスケヨリヒメとの婚姻話が語られるが、ここの解釈は少し難しい。書かれている内容は次のようなものだ。
  ①天皇は阿多の小椅君の妹を娶っており、その子がタギシミミ命とキスミミ命。
  ②天皇は大物主の子・ヒメタタライスケヨリヒメを娶り、三人の子が生まれる。
  ③天皇が亡くなるとタギシミミ命が皇后のヒメタタライスケヨリヒメを娶る。
  ④ヒメタタライスケヨリヒメの助言で、三人の子供たちがタギシミミ命を殺す。

 ①②を推測で修正するならば、
  ①内色許男命には、もともと二人の子がいた。
  ①②内色許男命は、八代天皇の妹であり、七代天皇の子・ヤマトトモモソビメ命を娶った。
  ②八代天皇は内色許男命の妹を娶り、三人の子が生まれた。
ではないだろうか。
 ③については、ヤマトトモモソビメ命は単に内色許男命との子を生すだけでなく、内色許男命側との窓口だったということなのかもしれない。
 ④は、八代天皇の子・大毘古命がタギシミミ命を殺したことを表しているのではないだろうか。三兄弟のうち、殺した人が天皇になったように書かれているが、これはツクヨミ国を治めるのが大毘古命になったということだろう。十代天皇の事績の中に、大毘古命が建波邇安王を倒す話があるが、タギシミミ命が建波邇安王なのかもしれない。

 推測を加えてはいるが、こう解釈すると、内色許男命から大毘古命につながる流れを記していることになり、これまで考察してきたツクヨミ国の成立過程と矛盾がないだろう。
 ツクヨミ国の成立過程を神武天皇の事績として記したのだ。

 しかし、ツクヨミ国はこの後神話から姿を消す。そしてアマテラスとスサノオの話がはじまる。
                           【続く】

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