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夏といえば「素謡」! その魅力とは
素謡とは
舞やお囃子が伴わない、謡だけの演奏形式です。
能楽師は舞台で斜めに並んで座って、紋付袴か裃(かみしも)を着て謡います。
通常、一曲まるまる謡う「番謡(ばんうたい)」を「素謡」と呼んでいますが、一部を謡う場合は「独吟(どくぎん)」「小謡(こうたい)」や「連吟(れんぎん)」があります。
また、能ではワキ方が謡うところも、素謡ではシテ方が謡います(ワキ方による素謡の場合は、シテ謡や地謡もワキ方で謡います)。
素謡の魅力
やはり謡だけを聴ける所です!
能の上演中は、お囃子や舞、装束や能面などざまざまなところに目が向きます。
素謡は謡だけなので能面をかけていませんし、お囃子もありません。
そのため謡の節や間合い、声の強弱などをしっかりと謡を聴くことができ、物語や場面を楽しむことができます。
謡のお稽古をされている方にもおすすめです。
素謡の由来
能としての上演ではなく謡だけを聞かせるという形式は、世阿弥時代からありました。独立した謡が能に取り入れられ、作品となった例もあります。そして、江戸時代、面装束をつける能は武士のために上演されることが多くなりましたが、謡のお稽古は町人も自由にできたため謡を謡うことが流行しました。
その時に謡本が刊行され、今でもお稽古をする方には必需品となっています。
檜書店も江戸時代から謡本を刊行し、現在も観世流と金剛流の謡本を制作しています。
京観世(きょうかんぜ)
「京観世」という言葉を聞いたことがありますか。これは江戸時代に京都を中心におこった観世流の素謡を専門とした一派のことです。特に、京観世五軒家(ごけんや)と呼ばれる五つの家(岩井・井上・林・浅野・薗)は、謡を各地に広めました。江戸時代に、庶民の間で謡のお稽古が大流行した一つの理由に、京観世の影響があるといえそうです。
※京観世五軒家のうちの浅野家についての研究書が刊行されました。興味がある方はこちらもぜひご覧ください。
また、薄暗いお座敷で、謡い手は屏風やのれんの後ろで姿を隠して謡い、聞き手は声だけを鑑賞する謡講(うたいこう)という形式も京観世から始まりました。
素謡の会
まずは能楽師の声や謡に興味を持った方におすすめです。
朗読を聞くように物語を楽しめます。
また、素謡会では「習いもの」と呼ばれる重い曲(難しい曲)が上演される場合が多くあります。
プロの能楽師が素謡の会を始めたのは明治になってからと言われています。空調設備が整っていない頃は、夏に面装束をつけて舞うのは大変ですし、汗で装束が傷みやすいことから、夏は素謡や仕舞、面装束をつけない袴能(はかまのう)が演じられることが多かったようです。
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ちなみに、ここまで紹介したように謡文化が広まった観世流で、素謡の会が現在でも多く開かれています。
通常の能の会とは異なる魅力がある素謡が上演される会をピックアップしました。
ぜひ足を運んでみてくださいね。