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NHKスペシャル「大往生」再見
今日、放送があってたNHKスペシャル「大往生」。実はその元となる番組は去年放送されていた。
ちょうど、実父がいよいよやばいと言われたくらいの放送で、私はそのときのためにと、真剣に当時も見てた。
特に全盲の娘さんを心配しながら、末期がんでも自宅で最期を迎えた方のパートは、いっときも目が離せないくらい凄かった。
喉に手を当てて、呼吸がこれでわかるでしょうと言われ、全盲の娘さんが
「今、呼吸が止まりました」
というシーン。
とても静かで穏やかな最期だった。理想的だと思った。
実父は意識が混濁するまでは、自宅に帰りたいと頑強に主張していた。
ちょうどメキシコから一時帰宅していた妹の夫に、このまま連れて帰って欲しいとお願いしていたらしいけど、なんとか押しとどめて、緩和ケアでの最期となる。
とても綺麗なできたばかりの病棟で、入院したときには、早くて一週間と言われていた。最初は喧嘩するくらいに元気だったんだけど、本当にみるみる意識がなくなっていった。
それから2週間かからずに亡くなったけど、看護の交代要員で行ったり来たりだった。
最期の方は腕があがったりさがったり、何度もぱたんぱたんとなり、痙攣が始まる。痙攣が始まったら、ナースコールを押す。でも、処置をするときとしないときがある。少しでおさまることもある。
ただ痙攣が始まると呼吸器にもそれがいって、それで呼吸が止まることがあるそうだ。
延命処置は望んでなかったので、積極的に何かするわけではない。
よくテレビでみる、心電図とかも横についてるわけじゃない。
ひたすら、呼吸止まり待ち。
交代でご飯を食べに出てたとき(ちょうどこのときに前回放送の大往生の話を一緒に食べてたおばさんにしてた)、一時危なくなり、私とおばさん(実父の妹)が戻るまで注射をされてた。
黄色くなった白目をあけて(でも見えてないらしい)、首がぐるりとまわるのを見た。気付け薬みたいなものだったのかもしれない。
今、死なれたら困るくらいの時間稼ぎの注射だったのかな? その後、この強い注射は使われなかったと思う。
それから愛知から妹と甥っ子がきて、私はずっと呼吸を見てた。
止まったら、看護婦さんを呼ぶのだ。
耳をすませながら、「まだしてる? もうしてない?」って感じで。
しばらく止まって、息をすることもある。ひたすら仕事しながら耳をすまして観察。
息から息までの感覚が伸びていってる気もする。
しばらく止まる。
ああ、もう止まったのかな?
私はナースコールを押す。
看護婦さんが来る。
「息はまだありますけど、もう最期です」的なことを言われる。
呼吸音が聞こえないくらいだけど、心臓は動いているらしい。
でも、やがて心臓も止まるのだそうだ。
こういうとき、お医者さんがきて、看取ると思ってたんだけど、緩和ケア病棟は違うらしい。最期まで看護婦さんだった。
「耳が最期まで生きてますから声をかけてあげてください」
と、言われ、私は
「お父さん、ありがとう」
と声をかけた。
実母が
「そんなこと言わないの!」
と急に怒る。
どうやら、「お父さん、頑張って」に聞こえたらしい。
ああ、もう死んで欲しいものねと思った。
妹は決して実父の傍に近づかない。たぶん、帰省してから、一度も触らないまま焼いたと思う。
死ぬ寸前の最期の息には病原菌がいっぱいついてるというのをテレビで見たらしく、マスク着用を厳しく妹から言いつかっていた。
それもあるだろうけど、単に嫌いだったからかもね。
お医者様は随分と後になってやってきて、死亡診断書を書いていた。
ドラマと全然違うと思った。
死ぬ時間って、お医者さんが来れる時間で、大体って感じなのかあ。
ぴたっと死ぬわけじゃないんだ。呼吸が止まって、心臓が止まって、きっと耳を司る脳とかがゆっくり死んでいくんだなあ。
そういう感じが、今日もやってた大往生の盲目の娘さんが看取ったお父さんの死のシーンと似てた。心づもりがあれでできていて、良かった。
実父はいい人生だったと思う。綺麗な病院に入れたし、スタッフはいい人ばかりだった。
腹水もあまりたまらないうちに、随分静かに死を迎えられた。もっとひどい状態の末期の話をいくつか聞いてたので、それに比べたら、穏やかだ。
恵まれた死だったと思う。望みうる最高の環境だ。
家にどんなに帰りたがっても、家では無理だった。専門のスタッフの素晴らしさを見ながら、やっぱり緩和病棟での最期で正解だったと、今でも思うから。
そして憂鬱な葬式の準備が始まった――。
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