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音声燻製 #毎週ショートショートnote

最近燻製にハマっている。
お調子者で新しい物好きの彼が燻製鍋を買ってきたのだが、簡単にできるし美味しくて色々試すのも楽しい。

今日も好きな食材を入れ、火にかける。

ん?

いつもより強い匂いが気になってキッチンに行くと、彼が鍋の蓋を開け、顔を突っ込んでいた。

「ちょっと!何してんの?」

叫ぶように言うと、彼はケホケホとむせながら手招きして私を呼んだ。

「"あーあー"。ねぇ、声変わった?」

「は?」

「いや、こないだお前渋い声が好きって言ってたじゃん。だからちょっと俺も燻製してみたんだけど。どう?燻し銀の声になった?」

わざとらしい低い声で聞く彼。

「...バカじゃないの?髪の毛臭い。ご飯の前にお風呂入ってきて」

鍋の蓋を奪って私は突き飛ばすように背中を押した。

「あはは、やっぱダメかぁ〜。俺、声高いから結構気にしてんだけどなぁ」

そう言ってバスルームに歩いていく彼に、呆れながら「ばーか」ともう一度その背中に言う。


大丈夫。
おじいちゃんになって声がしわがれるまで、じっくり隣にいるから。
そんなこと、面と向かって言ってあげないけど。


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