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書庫冷凍 #毎週ショートショートnote


「くそっまた落選だ!」

男は机に憤りをぶつけた。

「しゃ、社長...あの店に作品を寄贈されてはいかがですか?」

「あぁそれがいい!きっと社長の作品の素晴らしさに世の中が追いついていないのかと...」

「なるほどな、時代が早過ぎたということか。一理あるな」


男はそう言ってある店に行った。
その名も書庫冷凍。ここには寄贈した本を100年保管し、その後新刊としてリリースするというサービスがある。長期保管のための設備や場所代、販売手数料など寄贈という名目ではあるものの高額なサービス料がかかる。

「やはり社長の作品はあれくらいレベルの高い場所に置かれた方がよろしいかと...」

「100年後、大ヒット間違いなしです!」

「まぁそうだろうな。お前たちもそれがわかるんだから、現代では優秀な方なんじゃないか?はっはっは」

部下たちは頭を下げながら苦笑い。

その店はヨミビトシラズという別名でも名が通っている。
作者も読む人も不明というところからきているんだとか。


(415字)


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日野笙 / Sou Hino
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