スナイパーの意外な使い方 #毎週ショートショートnote
「大ケガじゃなくていい。あの子の演奏に支障が出るようにして!」
男はピアノのコンクール会場にいた。
スナイパーと言っても現代はこんな依頼も多い。
正直気持ちのいい仕事ではないが致し方ない。
男は早速ターゲットの女の右手を狙った。
これで彼女は今日一日指がまともに回らないだろう。
くだらん仕事だ。
そう思いながら会場を後にしようとしたその時。
「待って。私を狙ったの、貴方よね?」
振り向くと、凛とした目で男を見る女が。
「...悪いがこっちも仕事なんでね」
しらを切ろうかとも思ったが、その目に嘘はつけない気がして男は答えた。
「じゃあ私もお金を払えば貴方を雇える?」
「はは...君を狙った依頼者は教えられないぞ。守秘義務がある」
「誰だっていいわ。それより貴方プロなのよね?寸分も狂わずベストなタイミングで撃てる?」
「それが仕事だ」
その日、最後の演奏者だった彼女は見事優勝を勝ち取った。
「あんな旋律、初めて聴いたよ」
「彼女何度まで指が届くんだ?あんなに小柄なのに」
舞台にはコルクの玉が落ちていた。
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