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ギルティ外伝 :ご褒美ラガーと大塚さん
今日も慌ただしいオフィス。
ギルティ女史はいつものように猛スピードで仕事をこなしている。
ここのオフィスにいるスタッフの人たちの、ギルティ女史との付き合い方は大きく分けて3つある。
1つは良好な関係。
ギルティ女史の性格や彼女の考える働き方、このオフィスのあり方などを理解していて、厳しい言葉もきちんと受け止め、ユーモアのある会話の時は一緒にノリよく盛り上がる。
もう1つは、ややタジタジ系。
率直に言うと正直ついていけない時があるぜ...とは思いつつも、上司だし仕事だしというような感じで、苦笑いをしたりしながらも控えめに付き合うという感じだ。
そして3つ目は、距離を置いている系。
自分でオフィスを構え別の仕事も持っていて、ここでの仕事はきっちり収めるものの、実務以外の組織づくりなどに関しては極力ノータッチ。そういうことは求めていない、めんどくさそうなことは避けたいというか、彼女の方針やここでの働き方に一線引いている感じの人だ。
普通の会社でもそういった温度差みたいなものは生じるのかもしれないが、ここの人たちは全員が個人事業主であり言うなればフリーのデザイナーの集団というような側面もあるため、そしてなによりギルティ女史がなかなか色々と突き抜けているので合う合わないはかなり顕著に分かれる。その結果、このような構図になっているのだと思われた。
もちろん私はこの3つの中でいうと1つ目に属するタイプだ。
というか、理解して共感していると言うよりは右も左もわからず、必死で食らいついて修行しなければというような心持ちだった。
まるで生まれたてのヒヨコのように、ギルティ女史を絶対的存在としてまずはここで課されたものは全てスマートにこなせるようにならなければと、時には無茶振りをされながらも彼女と関わってきた。
でもこれは私の性格というかポリシー的なところもあるかもしれない。
私は「それなりにうまくやる」というのができない「やるからには全力で」タイプなのだ。
そして今回は、そんなオフィスの中にいたスタッフの一人、大塚さんの話。
大塚さんは20代後半で、ここに努めて3年くらいになるらしい。
彼は基本的にいつも穏やかで優しく、ギルティ女史とも良好な関係を築いていて、普段の業務はもちろんギルティ女史の気まぐれでたまに巻き起こるちょっと変わったイベントや思いつきのアイデアなどにも「いいですね!」と乗っかり、話を弾ませるのが上手いタイプだった。
大塚さんは私にも気さくに話しかけてくれ、オフィスの中では年齢も近く帰りの方面が一緒だったこともあり、遅い時間まで業務が長引いてしまった時は「ねぇ、日野ちゃん。今日”ご褒美”行こう!」なんて、帰り際にごはんに誘ってくれたりした。
大塚さんの言う"ご褒美"とは、すしざんまいのことである。
夕ご飯も食べる暇がないくらい怒涛のように働いて、帰りはもう終電ギリギリだぜ...という時間に終わる日。
私たちはよく一緒にすしざんまいに行った。
「こんなに働いてお腹ペコペコの中終電にダッシュして、結局コンビニごはんとか家に帰って寝るだけとか、悲しすぎる...。だったらもう、電車諦めてゆっくりご飯食べたくない?帰り、途中まで一緒だし俺がタクシー代持つからさ、付き合ってよ」
ある日のそんな大塚さんの一言からたまたま始まった「ご褒美すしざんまいの会」は、それ以来私たちのめちゃくちゃ頑張った日の定番コースとなった。
ところで、すしざんまいの何がご褒美なのか。
もちろんお寿司も今日一日頑張ったご褒美なのではあるが、私たちがご褒美と呼んでいたのはそこで飲む瓶ビール、キリンのラガービールのことだった。
疲れた体に空腹のお腹、そこで好きなお寿司を頼んでワクワクと待っている間に最初に出てくる瓶ビール。
当時よく行っていたそのすしざんまいで出てくるラガーがもう、いつもキンキンに冷えていて、最高に美味しかったのだ。
初めて行った時には2人で声をそろえて「うまっ!」と叫んだほど。
大塚さんはそもそもそこまでお酒が強いわけではなく、付き合いでコップ1杯くらいか、シャンディガフならまだ...という感じのタイプだった。
それもあって、一杯だけ飲みたいけどジョッキなんて飲めないからということで2人で一本瓶ビールを頼み、残りは私が担当するという形だったのだが、そのあまりの美味しさに、大塚さんはすしざんまいでご褒美ラガーを飲む時はちょうど半分ずつ飲みきれるくらいになった。
そんなこともあって、私と大塚さんはオフィスではそれほど頻繁に会話をすることはなかったものの、すしざんまいに来ると「あー今日も頑張ったねぇ」なんて言いながら色々な話をした。
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