違法の健康 #毎週ショートショートnote
「ほら、これ」
「やっと行ってきた?どうだった!?」
「どうって、書いてる通りだよ。だからなんでもないって言ったろ?まったく人を年寄り扱いしやがって」
「ちょっと、ちゃんと見せてよ」
詰め寄る娘にその書類を渡し、自室に戻る。
俺は生まれて初めて法を犯した。
しかも旧友にその片棒を担がせてまで。
「しかし、なんでこんなもんを…」
「どうしても必要だったんだ。お前にはこんな茶番に付き合わせて悪いと思ってる。大丈夫、万が一を考えて遺言書にもお前に罪がないことは書き添えてある」
「縁起でもないこと言うなよ。俺は娘さんに合わせる顔がないよ」
「そう言うな。合わせる顔がないのは俺の方だ。それに孫にはきっと本当に会えそうにない。だからせめて、娘には俺のことなんかで気を揉まずに、心穏やかに元気な子を産んでほしいんだ。俺のわがままだよ」
「だからってこんな嘘の書類まで作らなくたって…」
「あいつ結構するどいんだよ。でもこれで俺は医者お墨付きの健康体だ」
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