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ギルティ女史と正当性

今日も慌ただしいオフィス。
ギルティ女史はいつものように猛スピードで仕事をこなしている。


ギルティ女史が立ち上げたここの部署は、少し形態が特殊なところだった。
プロフィットセンターという位置付けで独立採算制を取っており、私たちスタッフはそこで個人事業主として働いている。
他の部署の人から見ても、独立国家のようなちょっと不思議なポジションだったと思う。絶対王政のギルティ政権である。


働き出した当初は、簡単な説明を受けたもののプロなんとかセンターも独立なんとか制も初めて聞いた単語でわからないし、個人事業主が個人で事業をする主だということくらいはわかったが、普通の会社員と一体何が違うのだろうかというような感覚だった。(正直今もよくわかっていないことも多い)
これは、その方がスタッフにとって諸々の利点が多いということでギルティ女史がこの部署を立ち上げる時に決めた体制らしい。

とは言っても、ぼけっとした大学生活を過ごし、ぬるりと就職した私。
志が高い学生だったわけでもなく、社会に出る=会社からお給料がもらえるとばかり思っていたので「あなたは個人事業主です」と言われても何がなんだかさっぱりわからない。
「フリーランスでデザインの仕事をしてるんですぅ」なんて言えば聞こえはいいが、実情としては「えーすごい、なんか漫画とかドラマの設定みたい!おしゃれっぽい!(よくわかんないけど)」なんてことしか考えていない。


見積書、発注書、納品書、請求書...言葉としては聞いたことがあってもその役割やフローすらもこれから覚えるようなレベルの社会人経験ゼロの私には、自分がお金をもらうために会社に請求書を出さなければならないというのもその時はなんだか不思議な感覚だったし、何をどうすればよいのか皆目検討がつかなかった。

商学部、経済学部などに行っていれば学生時代に多少なりとも知識がついたのかもしれないが、私が卒業したのはどの学科にもわけわからんやつがごった返している芸術学部(偏見)である。


私は、前任のアシスタントであった通称下北さんに引き継ぎ業務と共に「これ使えばいいよ」と彼女が使用していたであろう請求書のテンプレートをもらった。

「業務内容とか作業時間とか諸々まとめて、自分で請求額入れて、提出するだけ」

そう言われたものの、早くも固まる私。
だって、業務内容って...花瓶の水を変えて花を活ける代は一体いくらなのだろうか。スタッフの昼食を買い出しに行く代をもらうってなんだか不思議な感覚だ。
ペンを補充する代、郵送物を配る代とはいくらなのだろう。
それらをまとめて「アシスタント業務」とするにしても、どうやって換算すればよいのだろうか。

細かな作業内容を考えれば考えるほど「私、こんな単純な作業しかしてないし、その単純作業ですら効率が悪くて日々怒られたりしているのに、これでお金をもらっていいのかな...」なんて思えてくる。
とはいえ請求書を出さなければ当然ながらお金はもらえない。
なんとかするしかないと、私はよくわからないままそれっぽいものを作ってみることに。


始業と終業がわかるようにタイムカードのような時間の記録は残していたので、私はこれまで働いてきたようなアルバイト頭で、時間ベースで大体の金額を算出すればいいだろうかという結論に至った。
しかし、もたもたと仕事をしている私はたとえば時給を¥1,000-と仮定してもそれをまとめると結構な請求額となる。でも、その分ここにいて作業したのは確かだしな...。

もう何が正解なのかわからなくなってしまった私は、期日も迫りとにかく出すしかない!と作成した請求書を提出した。
そして案の定、さっそくギルティ女史から呼び出されることになる。

「あなたの請求書見たけど、この内容はどういう理屈なの?」

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