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生き写しバトル #毎週ショートショートnote

肥田家こえだけの当主が亡くなった。
その地の名家で、資産もさることながら親族も多く相続争いによるいさかいが絶えない。
そこで代々当主は必ず遺書を残すように命じられてきた。しかし不測の事態により遺書が残らない場合もある。
その際は古くからのしきたりにより、どれだけ故人に似ているかによって相続を決定するのが習わしだった。

何代かに一度起こるかどうかのこの騒ぎ。
民衆はその奇妙な争いをある種楽しんでいた。

「見ろこの鼻、そっくりだ」

「俺の目の方が似てる!」

「俺は背格好が瓜二つだ」

強欲な者たちの泥試合が始まろうとした時、ある少年が言った。

「僕も参加していい?」

「なんだ、近くに住んでるガキじゃないか」

「大人の話に入ってくるんじゃない」

「いいから一回だけみんな、目つぶって?」

一同が静まる。


『お前たち、何を揉めている』


その声を聞き、皆驚いて目を開けた。
それは故人の声そのものだった。

「おい...まさに生き写しだ」

「当主が生き返ったかと...」

「じゃあコイツが総取りかよ、俺は許さねぇぞ」

目元が当主似の男が声を荒らげる。

「ううん、みんなでぴったり分けっこだよ。だっておじいちゃんずっと言ってたもん。みんな仲良くって」


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