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ギルティ女史と平田さん


地震があった翌日から、オフィスが入っていたビルは、取り急ぎ1週間程度、安全確認のため立入不可となった。

【ギルティ女史はプラダを着ない】
「働くとは、仕事とは何か」を教えてくれた、元上司のぶっ飛びストーリを
まとめたエッセイマガジン。
※連載ですが1話完結のためどこからでも読めます。


ギルティ女史は当然のように、これからしばらくの間オフィスに入れなくなる可能性まで昨日の時点で考えていたので、私たちはびっくりやどうしようという気持ちよりもやっぱりそうかというような心境だった。

私たちは当面は仕事をストップし、1日2回朝と夜に極力簡潔なメッセージで自分の安否確認を共有するというやり取りを交わすことになった。件名に「3/15日野 自宅待機 無事です」とだけ入れた本文のないメールを送るというような感じだ。


ACのコマーシャルばかりが流れるテレビ。
今まで毎日のようにバタバタしていた生活が突然0になったような感覚。
これからどうなるのだろうという不安。

対外的な仕事なんてほぼないアシスタントは、自宅でできる作業など皆無に近い。
私はただただギルティ女史の次なる指示を待つのみという形だったが、他のスタッフはクライアントや関係会社と今進行している案件のやり取りやスケジュール調整などかなり大変だっただろうと思う。

今でこそリモートワークなど働き方も多様化してきたが、その頃は自宅で作業する人などいなかったし、データの取扱いに厳しい規制があり、家に仕事を持ち帰るということがそもそも難しかったと思われる。


そんな中、自宅待機が始まってから3〜4日経ったくらいだったろうか。
いつものように定刻に安否確認のメールを送り、同じように各スタッフからも報告のメールが送られてくる。
このやり取りもなんとなく慣れてきたなと思っていた頃。
一通のメールにRe:のマークがつき、ギルティ女史がレスポンスを返しているメールが送られてきた。

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