大増殖天使のキス #毎週ショートショートnote
小さな猫を拾った。
ヨレヨレのぼそぼそになった状態で足元にすり寄ってきたそいつは、へとへとに疲れて帰り道を歩いていた僕よりもずっと頼りない足取りだった。
その姿を見てなんとなく放っとけなくなってしまった僕は、そのままそいつを抱き上げ家に連れ帰った。
野良猫とは思えないくらいぴったりとくっつき、家の中でも傍を離れない。そしていつの間にか僕の腹の上でぴぃぴぃと寝息を立てて眠り出した。
おでこの上の方にぐるりと白い模様のある黒猫。まるで輪っかでも乗せているかのように見える。
あまりに気持ちよさそうに寝ているのを眺めているうちに、僕はそのまま一緒に居眠りをしてしまった。
数時間後、ぺろりと口元を舐められた気がしてふと目を開ける。
そして起きた瞬間、全身に猛烈なかゆみを感じて思わず服を脱いだ。
そこには小さな天使の中に潜む更に小さいやつらの、大量のキスマークが付いていた。
「お前...」
僕はそう呟きながら、猫を抱いて風呂場に直行した。
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