半分ろうそく #毎週ショートショートnote
「誕生日おめでとう!」
「キャー!」
歓喜ではなく恐怖の声を上げ、彼女はろうそくが灯るケーキから離れた。
「どうしたの...?甘い物好きだよね?」
「ごめん...。ずっと黙ってたんだけど...実は私、半分ろうそくなの」
「...え?」
「だから火が苦手で...」
「そんな...」
「せっかく用意してくれたのに、こんな私でごめんね...」
信じられない話だが、彼女は悲しそうにうつむく。
「関係ない。どんな君でも好きだよ」
僕はなんとか慰めようと彼女を抱きしめた。
すると彼女はみるみる溶けていき、あっという間に小さくなってしまった。
「な、なんで...?」
「あなたが私の心に火を付けるから…。あーぁ、ぽっちゃりな子が好きって言ってたから結構盛ってたのになぁ」
小さくなった彼女が僕を見上げる。
「大丈夫。半分ろうそくだろうと小柄だろうと、君が好きだ」
「ほんと?嬉しい...!」
彼女の小さな口元に触れながら聞く。
「もうこれ以上溶けない?」
「ふふ、試してみて」
彼女はゆっくりと目を閉じた。
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