「風呂酒日和」第四話 お風呂編:記念湯 #創作大賞漫画原作部門
むむむ...とても肩が痛い。
万年肩こりなのだが、今日はそれにプラスして右の肩甲骨あたりがピリっと痛い。やはりこんな日は温かいお湯に浸からねば。
大塚駅を出て賑やかな駅前通りを抜けていく。サウナの大きな看板。ここが大塚記念湯だ。
扉を開けると目の前に細長いロビーが広がる。なんだか昔の小さなホテルのような雰囲気。
受付でタオルを借りて入浴料を払う。あっ、10円玉ないかも...。お風呂上がりのドライヤーを考えて、銭湯に行く時は必ず20〜30円は持っているのだが。しまった。
両替をお願いすると、なんとドライヤーは無料とのこと。えーやったぁ!ありがたい。
受付の反対面、右手には階段がある。ここを上がるとサウナらしい。銭湯とは別になっているようなので今回はお風呂を楽しむことに。タオルとロッカーの鍵を受け取り、女湯ののれんをくぐる。
え、すごい...!宇宙だ。
比喩ではない。
脱衣室の天井が一面宇宙柄!マッサージチェアや赤ちゃん用ベッドに置いてあるクッションも宇宙模様。そういえば入口のフットマットも宇宙柄だったかもしれない。ここは宇宙推しの銭湯だ。
鮮やかな青色のせいか、なんだか明るく感じる。
宇宙に昔も今もないだろうけど、人間の想像するちょっと前の宇宙という感じのタッチ。
ロッカーは縦長タイプで荷物が多くても安心のサイズ。
横の貼紙に「一番困るのは鍵の紛失です。ご注意下さい」と書いてある。なるほど、だから鍵を受付で渡すシステムなのかな。
そういえばどこかの銭湯にこの手のロッカーは鍵が複製ができないというようなことが書いてあった気がする。ロッカーごと交換になったら解体も取り付けもかなり大変だよね。なくさないように気をつけよう。
身支度をして浴室へ。
ほう、広めでちょっと変わったレイアウト。目の前に洗い場、突き当たりと右側に浴槽がある。浴槽は5種類。右から水風呂、ミクロンハイフラ絹の湯、薬風呂、ジェットバス、寝風呂。
右側の浴槽は一段高くなっていて、なんだかワクワクするようなつくりだ。
体を洗ってまずは寝風呂へ。
おぉ〜なかなか熱い。沁みるくらいのいい温度。手前のスペースで一度肩まで浸かり、お湯に慣れる。
少し狭い入口から横向きの浴槽に入っていく。ひっそり空間でいいなぁ。
波打つお湯で段差がよく見えないので手を付きながら横たわると、ちょうど右肩の下あたりにボコボコがジャストフィット。あぁ...そこそこ!
寝風呂のおかげで少し肩が楽になった気がする。
続いて隣のジェットバスへ。ボタンを押すタイプのものが2つ並んでいるが右側はもう既にボコボコしている。左側に入ってボタンをぽちっ。
来るのがわかっていたはずなのにボタンを押した瞬間、水流に驚いてちょっとびくっと跳ねてしまった。恥ずかしい。
次は向こう側の一段上がっている「ミクロンハイフラ絹の湯」へ。ハイフラ...なんだか不思議な響きだ。バイブラは聞いたことがあるが、どちらが正しい表記なのかはわからない。
足を入れるとややぬるめ。ゆっくり浸かれるいい温度だ。
泡風呂のようにもこもこと白い小さな気泡が水面に漂う、とってもなめらかな質感。このなめらかさによってバイブラの濁点までさらりといなくなってしまったのだろうか。ミクロンハイフラ、すごい。
ここからは奥の壁画がよく見える。
壁の絵はとっても賑やか。ワンダーランドのような未来の街っぽいイラストが描かれている。
街には電車や車、お店、動物園、神社にビル群にキャンプのテント。街並みと自然、上空は夜空。花火が上がっているところもあれば、これまた宇宙っぽく飛行機や衛星も飛んでいて、あらサンタさんまで。
眺めているだけで楽しくなるような夢がたくさん詰まった壁画だ。
一度浴槽を出て髪を洗う。
薬風呂が空いたようなのでいってみよう。
透明で茶色のお湯。壁には効能が書かれていて肩こり、冷え、うちみ、くじき、なんでも治りそう。
肩はもちろん、昨日なぜだかふらついてちょっと当たった肘のうちみや、意味合いは違うが日々くじけている心まで癒やしてくれそうである。
最後にもう一度絹の湯をおかわり。
うん、居心地がいい。ここが一番好きかも。
洗い場を見ると、おばさんが2人で順番に背中を洗い合っている。なんかいいなぁ。微笑ましい2人を眺めてから浴室を離脱。
ちょうど入ってきた人とロッカーが隣り合ってしまい、荷物を出して真ん中のスペースへ。大きな木のテーブルと腰掛けが置いてあるので、ロッカー周りが混み合っても大丈夫。体を拭きながらお風呂上がりの何人かを眺めてふと思う。
みんな肌がすごく綺麗だ。
おばちゃんたち、つやつやしていて生まれたてのよう。絹のようになめらかに見える。もしやこれは絹の湯の効果だろうか。
ここの常連さんになったら、私も絹の肌を手に入れられるかもしれない。
そんな想像をしながら私は記念湯をあとにした。
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