
Photo by
pipopo37
オノマトペピアノ #毎週ショートショートnote
「ねぇ、タターンは?」
適当に白鍵をいくつか鳴らすと、彼女は楽しそうに言う。
「じゃあ、タラララッターン!」
少し考えてから単音で軽快に駆け上がってみる。
「ふふふ、次はジャーン」
今度はさっきよりも力強くどっしりと鍵盤を押さえた。
「へぇ。あなたのジャーンってちょっと悲しいのね。私はこうかも」
彼女はそう言うと、すらりとした指で僕とは違う音色を奏でる。
「確かに、君の方が煌びやかだね」
「でしょ?…じゃあこれは?」
僕の手をひょいっと持ち上げパタンと鍵盤の蓋を下ろすと、彼女はその手をそっと頬へ運んだ。
「私からは、どんな音が聴こえる?」
「うーん…。ドキドキ、かな」
「クスクス」
わざとらしい声をあげながらにやりと笑う彼女。
僕はしっとりとした頬に乗せられた手をするりと腰に回して、彼女をすとんと自分の上に座らせた。
ピアノの椅子がギッと一度静かに軋む。
「ピンポン?それとも、ブーはずれ?」
しんとした部屋に、カチカチと時計の音だけが響く。
言葉は消え、鼓動が重なる。
(421字)
ここから先は
0字
サポート、嬉しいです。小躍りして喜びます^^ いただいたサポートで銭湯と周辺にある居酒屋さんに行って、素敵なお店を紹介する記事を書きます。♨🍺♨