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オノマトペピアノ #毎週ショートショートnote

「ねぇ、タターンは?」

適当に白鍵をいくつか鳴らすと、彼女は楽しそうに言う。

「じゃあ、タラララッターン!」

少し考えてから単音で軽快に駆け上がってみる。

「ふふふ、次はジャーン」

今度はさっきよりも力強くどっしりと鍵盤を押さえた。

「へぇ。あなたのジャーンってちょっと悲しいのね。私はこうかも」

彼女はそう言うと、すらりとした指で僕とは違う音色を奏でる。

「確かに、君の方が煌びやかだね」

「でしょ?…じゃあこれは?」

僕の手をひょいっと持ち上げパタンと鍵盤の蓋を下ろすと、彼女はその手をそっと頬へ運んだ。

「私からは、どんな音が聴こえる?」

「うーん…。ドキドキ、かな」

「クスクス」

わざとらしい声をあげながらにやりと笑う彼女。

僕はしっとりとした頬に乗せられた手をするりと腰に回して、彼女をすとんと自分の上に座らせた。
ピアノの椅子がギッと一度静かに軋む。

「ピンポン?それとも、ブーはずれ?」

しんとした部屋に、カチカチと時計の音だけが響く。
言葉は消え、鼓動が重なる。


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