執念第一　#毎週ショートショートnote

俺は親父が大嫌いだ。
伝統工芸の職人だった親父は昔ながらの職人気質というか、とにかく頑固で人の言うことを聞かない。
時代の流れもありもう商売には陰りが見えていたがそれでも親父は仕事のやり方を一切変えなかった。

俺だって一時期は将来継ぐことも考えてもっと時代に沿ってこうしたらとか海外に売り出すとか色々提案してみたが、親父は頑として聞かなかった。
俺はこのやり方を貫く。それが俺の生き様だなんて言って。
結局仕事はどんどんなくなり家族が生活するのもままならなくなった頃、親父は病に倒れあっけなく死んだ。

だから俺は誓ったんだ。親父のようには絶対にならない。
俺は一生、仕事なんてしないって。

最初から働かない。
辛い思いをさせるくらいなら結婚もしない。子供もいらない。
何もない方がマシだ。
これが親父を見てきた俺の答えだ。

「あんた、毎日ダラダラ寝てないでいい加減働きなさい！母さんだっていつまでも生きてないんだからね！」

「いや、俺は働かない。これが俺の生き方なんだ」

「何言ってんだか。ホントあんたってお父さんそっくり」

「は？どこがだよ！俺は親父みたいには絶対にならない！」

「もうなってるわよ十分」

(487字)