多分いろいろ同じだったので、ランチデートに誘われた。
数年前、私は友人と、あるギャラリーの運営をしていたことがある。
下町の少しさびれた商店街沿いにある、築年数がかなり経っている一軒家の建物。昔ながらの建具や内装をそのまま活かし、ギャラリーとして貸し出しをしていた。
そのギャラリーは定期的に借りてくれる人もいて、程々に利用もされていたのだが、1つだけ難点があった。
商店街という飲食店や食品を扱う店が多い立地柄と、建物の古さもあってか、ある招かれざるお客様がよくご来場していたのだ。
ネズミである。
ギャラリーのため、食べ物などは特に置いていなかったのだが、住んでいる人がいるわけでもなく、シャッターを下ろし真っ暗で誰もいない時間も多かったため、おそらく周辺で食料をゲットした彼らは、安寧の場所としてギャラリーを利用していたのだった。
警戒心の強い彼らは、人の気配がする時は姿を見せない。
そのため直接遭遇したことはなかったのだが、利用中に足音がしたという報告があったり、ケーブルやコードを噛じられてダメにされたりしていた。
そして、一度長期休暇で長く店舗を閉めていた時に、床下の収納を長期レンタルされた跡があり、それはそれはひどい目にあったことがある。
そこで、これではいけないと私達はネズミ駆除業者を呼び、現地調査と対策を依頼した。
最初の調査には友人が立ち会った。
調査の結果、建物の古さや小さな隙間が多い造りということもあり、めぼしい所を封鎖することはできても侵入経路を完全に塞ぐことは難しいという。
ネズミは1.5cmほどの隙間があれば、割とどのサイズの個体でもするりと中に侵入できてしまうのだそうだ。
わずか1.5cmで...。
にわかには信じがたいが、それはさすがに塞ぎきれない。
対策として、天井裏や小上がりのようなつくりになっていた床下の隙間にトラップを仕掛けることになった。
月に1回メンテナンスが入り、殺鼠剤の入った餌の減り方を見たり、ネズミが掛かっていればすぐにトラップの交換に来てくれるという。
調査と第1回の対策を終えたが、やはり彼らはなかなか捕まらない。
私はその1ヶ月後、メンテナンスの立会を対応することになった。
店舗に駆除業者が現れ、名刺交換をする。
渡しながら、驚いた。
あ、同じ名字だ。
向こうもびっくりしている。
「同じですね。ははは。」
「そうですね。よろしくお願いします。」
なんとなく親近感を覚える。
特にそこまで珍しい名前でもないのだが、業者の人は
「僕、親戚以外で同じ名字の人と会ったの、初めてかもしれません。」
とちょっと嬉しそうにしながら作業を進めていった。
なんてことない話だが、私もなんとなく嬉しい。
そしてその1ヶ月後、友人との予定調整の結果、今回も私が立会に向かうことになった。おそらく業者の人も担当エリアが決まっているそうなので、またあの人であろう。
人見知りの私は、一度挨拶したし気が楽だな、くらいに思っていた。
店舗で待っていると、駆除業者の人が現れる。
「こんにちは。本日もよろしくお願いいたします。」
「はい、よろしくお願いします。」
彼は私の姿を見て、またしても驚いていた。
そしてこう言った。
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