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父親(1)

父親のことで相談がある、と母親からの留守電が入った、先週。内容を聞かなくても、それがよくない話なのだ、と分かる。

Eさんは、折り返しを先延ばしにして、やっと今、母親の話を聞いている。「ゴエンセイハイエンで手の施しようがなく、持ってもあと半年と医者にいわれた。

忙しいとは思うけど、お父さんの顔を見に来てあげて」。母親は、一息にいった。「安っぽいドラマみたいだ」。聞きながら、Eさんは、思っていた。

もう20年も実家に顔を出していない息子だ。その理由は、明らかに「忙しい」ではない。そのことは、彼にも彼女にも分かり切っている。


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皮膜
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