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#2411273

城と呼ばれる官庁の役人に測量師として雇われ、雪深い村にやってきた男は、でも、一向に雇い主に会えず、仕事を始められない。

接触を試みる男に、村民たちはその難しさを語る。「こちらから城のだれかに電話をかけると、あちらでは下級の課のあらゆる電話のベルが鳴りだすのです」。

巨大官庁に翻弄される異邦人の姿を描く。カフカの「城」は、そんな小説だった。昼下がり、市役所に電話しながら、Eさんは、そんな話を思い出していた。

父親の死亡の手続きのために、もう随分と電話口で待たされている。保留音は、必要以上に軽快で、自分の悲しみが世間と共有されないものだと教えられる。

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皮膜
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