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kunihito_miki
皮膜という名
皮膜という名を自分に付けた時、私の念頭には1編の詩がありました。「うそとほんと」という詩でした。
うそはほんとによく似てる
ほんとはうそによく似てる
うそとほんとは
双生児
虚実皮膜という、自分でもうまく説明できない理屈(あるいは理想)をピタリと言い当ててくれる詩でした。
うそはほんととよくまざる
ほんとはうそとよくまざる
うそとほんとは
化合物
もう60年も前の詩でした。でも、「本当らしいうそ」が私たちを惑わせる現代にもよく当てはまる詩でした。そして詩人は、60年後の私に忠告しました。
うその中にうそを探すな
ほんとの中にうそを探せ
ほんとの中にほんとを探すな
うその中にほんとを探せ
私も「うその中のほんと」を言葉にしたくて、けれどちっとも「ほんと」にたどり着かない間に、詩人は、詩だけを残して逝ってしまいました。
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