－新幹線からの風景－(20191005)

主に聞こえる音は
車内アナウンス、エアコンの音
車体と線路、もしくは、
車体と大気の摩擦音

　 東京

ガラスとコンクリートの四角
無機質な感じ
光を吸い込むような灰色
半月がついてくる

　品川

交差する線路、波打つビル街
ハケで書きなぐった雲
地上、十数メートルを滑る
右に傾く初老の男

　新横浜

眠気、あくび
坂に並ぶ住宅
日が落ちてきた

トンネル

目で追えない緑
広告はどこにでもある
田畑の区画の四角
斜めに横切る乗用車

トンネル

丘と送電塔
窓の外の流れに酔う
まぶたの裏で赤黒赤黒
海が目に入る

断続的なトンネル

まぶしくてうまく目が開かない
見通せる距離が広がる
数本の煙突、吹き上がる煙が
後ろに流れて、もう見えない

欄干のストロボ

昼と夕方の境目の橙
すべてを書き留められない
書き留める必要もない

　名古屋

日がだいぶ落ちてきた
影になるそれ以外の全部

でかい川
建物が低く広く
でかい川
比例して広く建物
でかい川

視界をさえぎる山
上に雲が触れそうで触れない
建物の代わりに山が
見通しを狭くしている

山に生える送電塔
唐突な車庫
太陽が山にさしかかって
半月がまた同じところに

半月に見張られている
黄色い雲も流れていくのに

　京都

住宅の間に寺社
山は少し薄くなる
空がぼんやりグラデーション
半月は濃くなってきた

密集する集合住宅
建物の中に並べられたトラック
目につき始める街灯、蛍光灯

　新大阪