石油ストーブとおばあちゃん
最近、朝寒くなってきて、起きるのが辛くなってきた。
私は寒いのが苦手である。
暑いのは全然苦手ではなく、なんだか「私、生きてる!」って気持ちになり、むしろ好きなくらいだが、寒いのは体も気持ちも億劫になる。
「寒い」と「寂しい」は心持ちが似ている気がする。
心の奥底がつーんとするのだ。
もし、夫が東北以上北に転勤になったとしたら、単身赴任をお願いするだろう。
それくらい寒いのが苦手だ。
毎年、冬が近づくと少し憂鬱になる。
そして寒くなってくると、毎朝、着替えるときに、ちょっと「エイヤッ」と気合を入れないと着替えられない。そこさえ乗り切って、たいてい着替えてしまえば、気分も上がり、やる気も出てくるものなのだが。
寒くて着替えるとき、たまに心に思い浮かべるのは小学生のときの朝だ。
*
私は和歌山にある田舎町の、なんてことない公立小学校に通っていたが、そこは一丁前に制服があった。
灰色のブレザーに白い丸襟のブラウス。
その白いブラウスを、寒い朝、おばあちゃんが石油ストーブの前で軽くあぶって暖めてくれたのだ。
「ほら、あったかいやろ」
石油ストーブは、上に乾燥対策でやかんが乗せられていており、シュンシュン音が鳴って、袖を通したときのほんのり暖かい肌の感じが今でも鮮明に思い浮かぶ。
おかげで私は寒い朝でも、毎日楽しく小学校に行くことができた。
ブラウスにアイロンをかけてくれたり、寒い朝にストーブで暖めてくれたり、そのころは当たり前でなんとも思わなかったけれど、今思うと、毎日やさしさにふれていたんだろうと思う。
*
今、息子は小学生である。
「寒くて起きられないよー」
とか言っているけれど、寒がりな母の私はその気持ちが数倍わかる。
私も頑張って起きて、息子のために朝ごはんを作る。
マンションの我が家に石油ストーブはないけれど。
毎朝あわただしく準備して、小学校に向かう背中を見送って、
「今日も楽しい一日でありますように」
と心の中で願う。
それから、パジャマの私はようやく着替え始める。
まだちょっと気合がいる。
石油ストーブとおばあちゃんを思い出すと、心がほんのり暖かくなる。
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