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【日向坂46】進化を続けるセンター・佐々木美玲。彼女が見せる『ハッピーオーラ』の秘訣とは。

さて今回は「八百屋のおっちゃんからサービスされてそうなアイドルNo.1」の佐々木美玲こと、みーぱんについて掘り下げていきたいと思います。

佐々木美玲といえば日向坂の前身グループである「けやき坂46」の後期センターにして(2020年12月時点の)日向坂46の現センターです。主人公然とした存在感に長けた前センター・小坂菜緒と比べると、明るく屈託のない笑顔やチャーミングなキャラクターが光る子ですね。

実際にみーぱんと仕事した女性タレントはこぞって彼女のファンになるという特異体質で、たとえばDream5の元メンバー・大原優乃も一瞬で彼女の「娘」にされています。さらにグループ内にも2期生・河田陽菜、濱岸ひより、3期生・山口陽世という「娘」を抱えるなど、その愛にあふれた愛くるしいキャラクターでどんどんファミリーを増やしています。

そんな佐々木美玲ですが、なにもキャラクター性だけでセンターに抜擢されたわけではありません。彼女にはグループ随一の表現力が備わっており、最新曲「アザトカワイイ」でもその真価が存分に発揮されています。

今回はそんな彼女の表現力がどのように形成されていったのか、なぜこんなにも愛されるキャラクターになったのかを、けやき坂46の歴史とともに掘り下げていきたいと思います。

■本気でアイドルを辞めようと思った『ある事件』

佐々木美玲の加入は2016年5月。既にグループを卒業した長濱ねる、井口眞緒、柿崎芽実を含めた一期生12名で欅坂46のアンダーグループ『けやき坂46』としての活動を開始しました。

しかしスタートは決して順風満帆とは言えませんでした。結成から1年近く仕事と呼べる仕事はなし。2017年3月の『けやき坂46単独公演』(Zepp Tokyo)が久々の大仕事となりましたが、やはり場数の少なさからか、当時の彼女たちの表情にはあどけなさが残っていました。

とはいえ同公演中にZeppツアーの開催が発表されるなど、グループにとって前向きな話題も飛び出し、いよいよ快進撃が始まるかに思われたのですが、その直後に彼女たちを絶望の淵に叩き落とす「ある事件」が起きてしまいます。

単独公演からわずか2週間後の同年4月、『欅坂46デビュー1周年記念ライブ』(代々木第一体育館)が開催され、同ライブでけやき坂46のメンバー追加オーディション(2期生オーディション)が行われることが発表されました。

実はこのオーディションで日向坂46を代表するセンター・小坂菜緒をはじめとした有望な2期生が加わることになるのですが、当時を振り返った佐々木美玲は以下のように心情を吐露しています。

「私たち(1期生)も活動が始まったばっかりで、すぐ追加メンバー募集ってくると『私たちって意味ないんだ』って思っちゃって、その時はショックで本当にボイコットしようとしました」(『日向坂で会いましょう』2019年4月7日放送分)

この考えからメンバーが起こしたのが『楽屋立てこもり事件』です。そして立てこもりの最中に美玲の口から出たのが「もうみんなで辞めよう」という一言。本気でアイドル人生に絶望した瞬間でした。

しかし「(僕たちは)ひらがなけやきが大好きだから」というスタッフの激励もあって立てこもりは終了。メンバーはボロボロのメンタルながら舞台に立ち、そこから改めて自分たちのあり方、グループのあり方について見直していくことになります。(ちなみにこの事件の心境は日向坂46の1stシングル『キュン』の特典映像でも詳細に語られています。)

■『ハッピーオーラ』が一人の少女の心を動かす

実はこの見直しの際に生まれたのが、日向坂46にも受け継がれた「ハッピーオーラ」というコンセプトです。スタッフに何気なく言われた「ハッピーオーラ」という言葉がきっかけとなり、グループのコンセプトが決定。

そこからセットリストを含めてパフォーマンスのやり方を見直し、グループの雰囲気は欅坂46とは異なるものへと変わっていきます。そんな中で彼女たちも徐々に「自分たちらしさ」を表現できるようになっていき、それはとある少女のもとにもしっかり届くことになります。

私は、大阪公演と名古屋公演をライブビューイングで拝見していました。
大阪公演はオーディション前、名古屋公演はオーディション期間中でした。

私は初めて、大阪公演で歌って踊ってるけやき坂46を見て、かっこよすぎて、感動して涙が出てきました。
その時に、同じステージに立ちたい。けやき坂46になりたい。と強く思い、オーディションを受けることを決意しました。

この文章を書いたのは後にグループのエースとなる2期生・小坂菜緒。彼女は当時一般の中学生として『Zepp Namba公演』、『Zepp Nagoya公演』のライブビューイングに参加しました。そしてひらがなけやきの観客にハッピーオーラを届けようとがむしゃらに努力し続ける姿が小坂に刺さり、彼女にけやき坂46・2期生オーディションの参加を決意させました。

■人気メンバーの離脱と佐々木美玲の覚醒

人の心を動せるまでに成長した彼女たちでしたが、同年9月にさらなる不運が襲いかかります。グループ設立のきっかけであり、人気・知名度ともに欅坂46の平手友梨奈と肩を並べる長濱ねるの「けやき坂46兼任解除」が発表。欅坂46の専任となり、即日中にグループを離れることが発表されました。

しかもこの発表の2日後には『Zepp Sapporo公演』が決まっており、まだ知名度の低い1期生11人だけで公演をやり抜かなければなりませんでした。

後にキャプテンに任命され、グループを牽引する1期生・佐々木久美はこの日の公演をこう語っています。

ひらがなけやきのハッピーオーラを
今まで以上に全開でやりきろうと意気込んだものの、
ステージに立つまではとても不安でした。
でも、いざ始まると
見にきてくださっている方全員が
私達のことを笑顔で見てくださりました。
ライブビューイングでも見てくださっている方々がいました。
11人のライブを最初から最後まで
一緒に楽しんでくださりました。

1期生にとっては青天の霹靂とも言える発表でしたが、蓋を開けてみれば多くのファンが彼女たちに声援を送り公演は大成功。ツアーファイナルの『千葉・幕張メッセ イベントホール公演』もメンバーの柿崎芽実が骨折により参加できないアクシデントが起きたもの、彼女たちの集大成と言うに相応しい公演となり、アンコールの『W-KEYAKIZAKAの詩』では多くのメンバーが歌唱中に涙を流しました。

そしてこのツアーを経てメンバー全員が大きく成長を遂げたのですが、中でも佐々木美玲の成長は明確に形となって現れます。

2018年3月にリリースされた欅坂46の6thシングル『ガラスを割れ!』に収録されたけやき坂46の新曲『イマニミテイロ』で佐々木美玲が初めてセンターに抜擢。同年6月に発売されたグループ初のアルバム『走り出す瞬間』のリード曲『期待していない自分』のセンターにも彼女が抜擢されました。

グループ単独でリリースする初の作品『走り出す瞬間』でのセンター抜擢は、実質的にグループを代表するメンバーに選ばれたの同じです。名実ともに改名までのけやき坂46を牽引する存在となり、かつて本気でアイドルに絶望した少女とは思えない大躍進を遂げました。

■『ハッピーオーラ』を全力投球で体現

一方で彼女のセンター抜擢には疑問の声も少なくありませんでした。

佐々木美玲はグループ初の楽曲となる『ひらがなけやき』を含め、MV化された楽曲では常に2列目(最後列)で、決して目立つ存在ではありませんでした。むしろ『ひらがなけやき』『誰よりも高く跳べ!』で長濱ねるとWセンターを務めた柿崎芽実や、『それでも歩いてる』でセンターを務めた齊藤京子、常に1列目(フロント)で存在感を放ってきた加藤史帆が適任ではないかと考えたファンも少なくありませんでした。

しかしこうした声はアルバムの発売を記念した東名阪ツアー『けやき坂46「走り出す瞬間」ツアー2018』が始まるとすぐに立ち消えます。楽曲の世界観を鮮烈に描き出す姿や、楽曲によって表情と雰囲気が変わる自在な表現力は多くのファンを魅了しました。そして何より彼女が堂々と、楽んで舞台を駆け回る姿は、グループが掲げていたテーマ『ハッピーオーラ』と見事に一致していました。

センターに抜擢された当時の心境を佐々木美玲はこう語っています。

今回私がセンターで納得しない方ももちろんたくさんいると思います。
でも私が今それを気にしてもどうにもならないし、それなら今センターを務められたから一生懸命頑張るしかないなって思います。
みんなの前に立ってるいじょう、今まで以上にちゃんとしなきゃなって思います。
前に立って初めて、今まで自分に甘かったなって思うことも沢山ありました。
とにかく、自分らしく頑張りたいなって思います。
たくさん不器用なことはあるけど、一つ一つ頑張りたいです。
頑張ります。

また彼女の表現力は注目を集め、2019年1月には女性シンガー・Aimer(エメ)のトリプルA面となる16thシングル『I beg you/花びらたちのマーチ/Sailing』に収録された『花びらたちのマーチ』のMVに出演。けやき坂46の知名度拡大に貢献しています。

こうして見ると佐々木美玲はZeppツアーを経て急成長したように思えますが、実は彼女は元々高い潜在能力を持っているメンバーでした。それはオーディションの審査員から"special"を意味するS評価を付けられた長濱ねるが「完璧人間。ダンスも歌も出来るし、ひらがなけやきで1番憧れている。」と称していたほど。加入当時の彼女に不足していたのは、将来への不安から来る『自信』だけだったのかもしれません。

■そして母になる。

というとなんだか変な感じになってしまいますが、センターを担うことで生まれた余裕や視野の広さは、後輩に対するフォローやサポートの面でも発揮されていきます。

2019年3月にはけやき坂46が改名し「第3の坂道グループ」として日向坂46が誕生しました。しかしこれまた順風満帆な滑り出しとは言えず、直後に佐々木美玲の同期である柿崎芽実が卒業、仲の良かった2期生・濱岸ひよりも心身の不調により休業に入ります。

既に復帰した濱岸ひよりの口からも語られていますが、美玲は休業中も彼女のことを常に気にかけ、連日声をかけ続けていました。その結果4thシングル『ソンナコトナイヨ』で濱岸ひよりが復帰。今では休業前なら考えられないほど明るい笑顔を見せてくれています。もちろん濱岸も美玲を強く慕っており、今も頻繁に彼女のブログやメッセージに美玲の姿が登場しています。

さらに美玲は持ち前のパフォーマンス力の高さを活かし、キャプテン佐々木久美と一緒に楽曲の振り入れにも参加しています。振付師も「任せている」と語っているほどで、立ち位置や振りの微調整をはじめ、後輩への指導やオリジナルの振りの考案など、パフォーマンス面での最終調整役も担っています。

こうした部分の信頼もあってか、2020年2月に加入した新三期生・山口陽世もすぐさま彼女の魅力に取り込まれ、みーぱんファミリーの一員に加わっています。また最新曲の『アザトカワイイ』で彼女が再びセンターに選ばれた際には、1期生全員で泣いて抱き合って愛を伝え合うというエピソードもメンバーから語られており、それだけ彼女が仲間から信頼を受けていることがわかります。

■進化し続けるセンター、佐々木美玲。

また美玲は改名以降、アイドルとしての活動だけに留まらず、様々な分野に活動の幅を広げています。

2019年3月には『non-no』の専属モデルへの起用が発表。2020年3月には日本テレビ系列で放送されている朝の情報番組『ZIP!』の情報コーナー『流行ニュース キテルネ!』のリポーターに抜擢。同年7月にはテレビ東京の『ドラマ25』枠で放送されていたテレビドラマ『女子グルメバーカー部』にも単独出演。その他にも多数のバラエティ番組に呼ばれており、かつてAimerのMVに出演した時と同様、個人の活動を通してグループの知名度拡大に貢献しています。

さらに彼女の表現力は今なお進化を続けています。元々楽曲によって表現を自在に変えられるなど、振れ幅の大きさが武器だった美玲ですが、次第に表現の濃淡を使い分ける技術を身に付けていきます。

たとえば佐々木美玲がセンターを務める『期待していない自分』はライブでも高い頻度で披露される楽曲ですが、当初は指導された通りの方針を守り、純粋に苦悩する主人公の姿を表現してきました。

しかし韓国で開催されたアジア最大級の音楽授賞式『MAMA(2018 Mnet Asian Music Awards)』では自らの意思のもと振付師のTAKAHIROと協議し、より強くもがき苦しむ姿を投影する表現に変更。

さらに2020年7月に開催した無観客ライブ『HINATAZAKA46 Live Online, YES!with YOU! ~“22人”の音楽隊と風変わりな仲間たち~』では、逆に苦しみを達観したような表現に変更するなど、「今の自分の(グループの)等身大の感情」を楽曲に乗せるという技法を使っています。

これは最新曲の『アザトカワイイ』でも発揮されています。日向坂は緊急事態宣言を受けて実質的な休業に入ったものの、その間に自分を見つめ直し、自分なりの強みを獲得したメンバーも多くいました。そのため緊急事態宣言後のグループには、スケジュールに追われ張り詰めていた2019年とは違った雰囲気が築かれていました。

MVを見るとわかりやすいのですが、同じく明るい曲調の「キュン」と「ドレミソラシド」(ともに2019年リリース)はメンバーの表情や動きがMVのコンセプトに沿って表現されています。その一方で「アザトカワイイ」はMVのコンセプトを踏襲しつつも、メンバーの表情から細かい動きまでとにかく全部が”フリーダム”です。

振付に冠番組で共演しているオードリー春日のネタが入っていたり、復帰した影山優佳をアピールするために無茶な大移動を組み込んだりと、とにかく「自由」がテーマの楽曲に仕上がっています。これは筆者の個人的な感想ですが、MVでも音楽番組でも、この楽曲を披露している時のメンバーってものすごく楽しそうなんですよね。

これは「会えない分思いっきりファンの人にハッピーを届ける」という今の日向坂のメンバーの感情とマッチしているのはもちろん、美玲の表現力によって作られた「明るく楽しく笑顔を届ける」という世界観の賜物だと思います。

そしてこうした世界観がファンも視聴者も制作スタッフの心も惹き付け、他のアーティストでも滅多にないアルバムの表題曲で2020年下半期の音楽番組にずっと出続けるという偉業を成し遂げていると筆者は考えています。

苦難の中でも腐らずに努力を続け、自分らしくあろう、みんなで前に進もうと決めたその歩みが、美玲を大きく成長させたのではないでしょうか。けやき坂46という歴史が、ともに歩んできた仲間が、今のハッピーオーラ全開の「佐々木美玲」を作り上げたのだと思います。しかもこれでまだみーぱん21歳ですからね。(全然見えない。いい意味で。)

というわけで今回はけやき坂46の時代を振り返りながら、みーぱんの成長の歴史や彼女が持つ強さについて掘り下げていきました。相変わらず長文(約6500字)になってしまいました…。みーぱん推しの方、「ちょっとここ間違っているよー!」とかあったらその辺はご容赦くださいましー!

ということで、こさかなをフォーカスした記事が年内最後とか言いながら、結局さらに1本書いてしまいました。とりあえず皆さま、良いお年をお過ごしください~!

#2.世界で一番ステキな「ぱん」

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