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【マンガ感想文】よつばと!
4年ほど前。
前回日本へ一時帰国した際に、数少ないワーホリ仲間と呼べる友人のお宅に一泊2日でお世話になった。性別は逆だが子ども同士の年齢も近く、一緒にボルダリングをして遊んだりもした。
そのお宅の居間の条件の良いところに、この『よつばと!』は置いてあった。奥さんから「とても面白いよ」と言われていたのだが、お酒を飲んだりしゃべったりするのに忙しくて、当時は読むことができずに終わった。
時を経て日本への一時帰国が難しくなった今、季節ごとに夫や子どもたちは本や漫画を送ってもらうことに忙しくしていたので、この漫画も追加してもらい、昨年末に我が家へやってきた。(余談だが、9月に船便で送ってもらい三ヶ月ほどかかっている。その後、我々の荷物よりも少しだけ後に発送してもらった荷物は、税関のある川崎で止められて送り返されてしまったなどの友人談を聞いた)
さて、『よつばと!』は5歳のよつばちゃんが主人公。
子どもらしさが全開で、周りの大人に習ったちょっと難しい言葉も交えたりしながら、身の回りの世界に興味いっぱいだ。周りにいる大人(子どもも)たちは優しく、よつばの存在を受け入れている。
父子家庭だが、そのあたりの「なぜ?」は書かれていない。ただひたすらに淡々と日常生活が描かれる。
リラックスして気負わずに楽しめる作品だが、声を大にして言いたい点がいくつか。
人間関係が羨ましすぎる
読んでいて、私が子どもの頃に体験した大家族の記憶が蘇った。一番下の叔父とは15歳程度しか離れていなかったが、5人いる叔父たちには結構遊んでもらった。その頃のような距離感で、お隣の3人の娘さんたちと付き合ってもらっている。いや、娘さんたちそれぞれのお友達まで一緒になっているからそれ以上か。毎日遊びに行くことを、お互いに普通のこととして受け止めている。
よつばのお父さんは家族との仲は良いようだし、勝手に家に上がり込んでくるくらい仲の良い友人たちもいる。よつばとふたりで孤立することなく、いろんな人間関係があり、持ちつ持たれつの生活とはこういうものかと思い知る。
視点が優しい
お隣のおうちのお母さんが、かなり早い段階で「(第一子を)産んだのは失敗」などと言っている。私はてっきり、このお母さんは要注意人物なのかと身構えたのだが、取り立ててそのようなキャラクターというわけではなかった。時々毒を吐く程度で、自分の子どもたちを受け入れているし、よつばのことも同様に受け止めている。
他のキャラクターにおいても、とっつきにくいように思われた人から自然と湧き上がる愛情を感じられる描きかたや、ダメなやつをダメなやつとして終わらせない、人間は奥が深いことを改めて思い知る描写もあるように思う。
ちゃんとしてる
よつばのお父さんは、洗い物を台所に溜め込むし、掃除もできていない部分があるようで完璧ではない。
しかし、よつばに伝えなければいけないと思ったことはきちんと伝えており、よつばも理解をしている。子ども神輿に参加してもらったお菓子の詰め合わせは、1日一つという約束を決め、よつばも律儀に守っている。おばあちゃんに教えられた、玄関で脱いだ靴をきちんと揃えるという習慣も。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
夫が先にこの漫画を読んで、『ぽっかぽか』と『クレヨンしんちゃん』を混ぜたようなお話だと言っていた。
確かに「子どもの奔放さ」「あるがままを受け入れる」「優しい視点」「人間味がある」「他者との距離感」といった部分で共通するものがあるように思う。
心理カウンセラーである友人が、この漫画を勧めてくれた理由もよくわかった。
現代、リアルで孤立するのは案外簡単だ。そして、豊かな人間関係があると人生が楽しくなるのは本当だ。我が家だって、節目に日本の家族と会えないのは寂しいし、子ども達には申し訳ないと思っている。歳を重ねるほどなんだか頑固になって、人間関係も狭くなっていくことの方が多いような気がしてしまう。
『よつばと!』の世界はなんだか良いよなーという思いから、この漫画を身近にキープしておきたいという気持ちが、居間の条件の良い場所に並べておきたいという気持ちがわかったのだった。
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