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電脳虚構

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近未来テクノロジー空想小説のショートショート
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2021年7月の記事一覧

電脳虚構#5.1 | 残機(extend)

※「残機(extend)」は上記のお話のAnother endです。 最後のオチまでは全く同じ、そこから少し拡張したストーリーです。 Badendなのか、Happyendなのかは読んでからのお楽しみですね。 それではどーぞ! ◆   □   ◆   □   ◆ 深夜の冷え切ったアスファルトが頬にあたる。 しだいにそれを覆うように生暖かいものが広がり、ぬくもりを与える。 --- 神経回路・切断 --- それが目に浸みて拭おうとした手。 動かそうにも何故か感触が無く、

電脳虚構#5 | 残機

深夜の冷え切ったアスファルトが頬にあたる。 しだいにそれを覆うように生暖かいものが広がり、ぬくもりを与える。 --- 神経回路・切断 --- それが目に浸みて拭おうとした手。 動かそうにも何故か感触が無く、視線を先にやるとその手は植栽の枝にぶら下がっていた。 --- 生命維持、不可 個体まもなく死亡 --- あぁそうか・・僕はたったいまこの真上の建物から落下してきたんだった。 なんで・・こんなことしたんだっけ? --- 個体、死亡 生体データ 転送開始 ---

電脳虚構#4 | リトライ

「死ね!死ね!この裏切り者!!」 私は夫にまたがり、何度も包丁で刺した。 「うわぁぁぁぁ〜〜!!死ね!はぁはぁ、死ね死ね!!!」 もうとっくに絶命していたのだろう、それでも我を忘れて刺しづづけた。 「カラン」 私の血だらけの手、その血のりでぬるっとすっぽ抜け床に転がった包丁。 その冷たい金属音で、ようやく我に返った。 壁・床・冷蔵庫・シンク。あちこちに飛び散った血と肉片。 赤く染まったキッチンには、さっきまで「夫」だった物体が無残な姿で横たわっていた。 「またや

電脳虚構#3 | 秘密の花園

午後の教室。 ちらちらと校庭の木々の隙間からもれる光、薫る風が窓から入ってくる。 「あぁ・・もう春なんだなぁ」と、その穏やかさについウトウトしてしまう。 今は古文の授業中、この先生の話は強烈な子守唄の効果がある。 ほら、右斜め前のヨッチャンもかなり寝むそうだ。 というか、あれはガッツリ寝てるわ。 さすがにまずいよ、、起こしてあげないと。 「ヨッチャン・・ヨッチャン、起きて」 と、鉛筆の先でつつく。だけど、反応はなし、、。 先生の気配を感じ、私は咄嗟に身を引いた。

電脳虚構#2 |ファストトラベル

傾いた廃ビルの一角、いまにも崩れそうな壁に貼られた広告をみる。 【 闇ポータル!¥49.800!大特価 】 男はその場で崩れ落ちた。 「・・・これだ、これがあればウチも再建できる!」 「ファストトラベル」が世界的なインフラとなり、常用化されて10年。 公共事業として、世界各地にポータルが設置された。 ポータルというのは正式にはTPS(トラベル・ポータル・ステーション)という装置だ。 大きさは高さ50cmほどの「ひし形のクリスタル状」の物体。 青白く発光していて、反

電脳虚構#1 | セーブポイント

西暦21XX年 「令和」と呼ばれていた時代から、テクノロジーの進歩は加速するばかりだった。 「5G」という通信技術の飛躍的な向上が起因となり、AI、ロボット工学、インフラ設備など、ありとあらゆるテクノロジーが別次元へと進化を遂げた。 スマートフォンなどというものはなくなり、米粒一粒ほどのチップをこめかみに埋め込み、アイトラッキングとや脳波で全ての操作が可能に。 車も自動運転なんて技術などは、もう時代遅れ。 仕事も学校も全てリモート、レジャー各種・ショッピングもヴァー