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小悪魔ちゃんと犬系男子(恋愛小説@2,000文字)

夏が終わるのを実感し始めると、あれこれ後悔してしまう事ってありますよね。

でももしかしたら「もう無理だ」と諦めてしまっているのは自分自身だけで、実は誰かに頼ってしまえばアッサリ解決してしまうなんてこともあるかもしれないんです。視点が少しズレれば、見える世界が大きく変わる様に。

今回は恋愛小説風で『得た知識をどのように活用するかは自分次第』というメッセージ性を込めました。

未来を作るのはいつも自分自身です。

小悪魔ちゃんと犬系男子

立派な入道雲が茜色に染まるとき、
私は中学生として最後の夏休みを終えようとしていた。

「あーぁ、明日から学校かぁ。学校は楽しみだけど、もう少し淡い思い出を作ってみたかったなぁ」

今年も恋愛的な思い出なしで双子の妹と一緒に花火を見て終わる夏。いつも通りの夏。
いまさらチャレンジしなかった自分を責めても明日はやってくる。
それでも中学生最後の夏休みという限定感が私の後悔を強くした。

「そう言えば、友達のルルカちゃんがハヤト君と付き合ったんだって」
隣に居た妹が情報提供をしてくれる。

ルルカちゃんというのは、私達の友達で小悪魔タイプの女の子。
「男子は、あぁいうタイプ好きだよなぁ」私は少し苦手なんだけど、距離感が近すぎるから。

やっぱ奥手女子ってダメなのかなぁとか思ったりしてみる。
男子も奥手ばかりだし。

「うーん、小悪魔系かぁ……」

私は最後の夏休みを終えるべく眠りにつくのであった。

明日は来るけど、まだ明日は来ていない

深い眠りについて数時間、なんとなく朝を告げる鳥の鳴き声が聞こえなくもない。
それでも朝が来たにしては早すぎる気がするし、なんとなく寝足りない。
私は自分の気持ちに素直に従い二度寝を決め込んだ。

いつも二度寝をすると脳がふわふわした感覚になる。
このふわふわ感が妙に気持ちよくて、早い段階で現実と夢の境界線が曖昧になっていった。

「ここはどこだろう」

目の前の青空に小さな入道雲が山から顔を覗かせる。既に死に絶えていたはずのセミたちも元気よく鳴いていた。

「今日から夏休みだね、お姉ちゃん!」

どこからか現れた双子の妹が情報提供をしてくれる。私に対して妹が嘘をつくはずがないし、この感覚は覚えがある。だから私は驚かない。

「また夏、始まっちまったかぁ…」

そうして私の中学生最後の夏休みは、再び幕を開けたのであった。

後悔しない夏休みに再チャレンジ

どうしてこうなったのか、理由は大体察しがつく。

私自身が夏休みが終わることを拒んでしまった。私の思考がチャレンジせずに夏休みを終える事を許さなかったのだ。

一応、現実か夢か分からない世界でもチャレンジすることはできる。

「よし!今度は淡い夏の思い出を作るぞ!!」

私には彼氏と呼べる存在は居なかったが気の合う男子は存在した。
犬系男子として有名なムギ君である。カタカナ表記にするだけでも犬っぽいが、本名は犬神麦となお犬っぽい。

ただムギ君は女の子達から非常に人気で、難攻不落の存在と呼ばれていた。彼の性格ではなく女子グループの関係性から彼氏にするのが難しかったのだ。

「やっぱり彼氏にするならムギ君がいいなぁ…」

この気持ちに嘘偽りはない。というか魅力的な異性を思い浮かべたとき、ムギ君以外に考えられなかった。彼の読書に耽る知的な感じとか、美形なのに気取らない性格その他もろもろ。

犬系男子の落とし方

私が「ムギ君を彼氏にしたい」と呟いたのを聞いていたのか、小悪魔系女子のルルカちゃんが急接近でやってきた。やっぱりこの子、距離感おかしい。

「ふーん、やっぱりねぇ。ムギ君の事好きなんだぁ?」ネタGET的な表情を浮かべながら、私の体をツンツンと突っついてくる。

「そうだよ、私はムギ君の事が好きなんだ!でも、どうしたら良いのか分からなくって…」

ルルカちゃんは少し「うーん」と考えたあとチュッパチャプス(イチゴ味)を舐めながら、近くの椅子に腰かけ上目遣いで話し始めた。

「ムギ君好きの女の子達ってさぁ、ムギ君を大切にしすぎなんだよね。飼い犬みたいに」

確かにそうかもしれない。みんなムギ君の事が大好きだし、ムギ君も私達の事を大切にしてくれる。

「でもムギ君だって一応、男の子なわけじゃん?男の子は追いかけられるより、女の子を追いかけたい生き物なんだよ。特別な存在になりたいのなら、追いかけさせなきゃダメだよぉ」続けて付け加えてこう言った「特にムギ君みたいなイケメン犬系男子は、ずっと追いかけられっぱなしだからねぇ」

目から鱗が落ちるとは正にこのこと。

ルルカちゃんってもしかして凄いんじゃないか。
しかも椅子に座りながら上目遣いで話しているから素直に恋愛アドバイスとして受け入れられるし。話している内容が同じ同級生とは思えないけど不快感が感じられない。これもテクニックの一つというのだろうか。小悪魔系女子恐るべしだよ。

「ルルカちゃん、ありがとう!」
ルルカちゃんに感謝の気持ちを伝えると、次第に意識が現実と夢の間で揺れ動く感覚が再びやってくる。

今度は朝を告げる鳥の鳴き声ではなく、双子の妹の声らしいものが聞こえてきた。

「…お姉ちゃん、朝だよ!今日から学校だよ~起きてぇえ~」

寝ぼけた私の顔をみて、双子の妹が「今のお姉ちゃん、こんな顔~」と変顔を始める。
そうして朝一番の笑いと共に、私の意識は完全に現実世界へと舞い戻った。親友からの素晴らしいアドバイスを頭の中に残して。

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