見出し画像

弓道における性能と制御について

 射術は、
 ①性能→「矢を的に向けて強く発射する。」という物理運動を行う能力。
 ②制御→①を確実に実行するための指令。
 に分類し、分析稽古することが重要です。

①「性能」について

 これは、「射手の技量」と「使用弓具の性能」になります。
 「射手の技量」は、目的を「矢を的に向けて強く発射する。」という物理運動に特化すると、重要点は「上押し」「伏せ」「捻り」「回内」「割込」などです。もちろんこれをきちんと実践するための、「足踏み」や「詰め合い」「伸び合い」などが必要条件です。この能力を高めるためには、単純に物理運動をさせるための筋力が必要になります。
 「使用弓具の性能」は、弓においては「強さ」「長さ」「出入り」など、矢においては「長さ」「太さ」「固さ(スパイン)」「重さ」「重心の位置」などです。その他「弦」や「弽」においても様々な性能があります。
 「射手の技量」と「使用弓具の性能」は両輪であり、どちらか一方だけが優れていても「貫・中・久」は達成されません。
 達成のためには、矢数をかけて稽古を重ねることと同時に、矢飛びや矢所(グルーピング)を確認し、適正な弓具を選択することです。

②「制御」について

 これは、①を行うために自身が身体各部に指令を出すことです。
 ちなみに、ドローイングマシン(弓を自動で引く機械)が行射をすれば、矢は全て同じ矢飛びと矢所(グルーピング)になります。ですから、「貫・中・久」は①を確実に制御することよって達成されるということです
 しかしながら、人間が行射しているわけですから、機械のような制御は残念ながらできません。
 私見ですが、機械制御に近づくべく制御力を高め、「貫・中・久」を目指すことに弓道の魅力があると思っています。

③「性能」と「制御」の質を高めるには?

 例えばプロのレーシングドライバーではない私に、完璧にチューニングされたレーシングカーを与えられても、真っ直ぐに走ることすら難しいと思います。
 このことから、射術の正しい基礎基本を繰り返し稽古し、それによって高まる自身の性能に応じた弓具選定を行うことが大切と分かります。
 また、電車の運転士は毎日同じ線路を同じように運転していますが、計器や信号などを指差し、さらに声を出して確認しています。なぜでしょう?それは、確実なただ1つの制御を行うためと、間違えたときのやり直しが効かないからです。弓道も同じように考えて稽古することです。今つがえた矢を確実に的中させるための動作とリザルトをよく確認することです。アーチェリーは「引き戻し」が可能ですが、弓道にはそれがありません。まさに電車の運転制御と同じです。
 自身にとって確実な制御力を身につけることで、日常の稽古、大切な試合、射詰めや遠近競射などの場面においても性能を発揮することができるのです。

 以上のように考えることで、日常の稽古の質がより高まり「射術」が向上し、「貫・中・久」が達成されます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?