あんぽ柿
Instagramのリール動画を見ていたら
『大勢の中にいて口数の少ないひとはメンタルが強い』
という言葉に出逢いました。
『彼は、ひとが話を聴いてもらうことを好むのを知っている。
そして自分の言葉を大切にしている』
なるほど、そうかもしれないなぁと妙に納得してしまいました。
口数の少ないひとはメンタルが強いのかどうか、わたしにはわかりません。
ただ、時折、黙って人の話に耳を傾けるタイプの人に出逢うと
「かなわないなぁ」と感じてしまいます。
先日、職場のちょっとした空き時間に
10才年下の男性と雑談になりました。
「手摘みの日本茶は、職人の手によって芸術品のように美しく仕上がる。
機械には到底追いつけない技術がそこにはある」
という話を彼から伺って、わたしが
「それはなんとなく分かるような気がします。人から笑われることもあるんですけれど、わたしは、あんぽ柿が大好きなんです。ひとつひとつ丁寧に作られた、あんぽ柿を食べたことがありますか?まさに芸術品でした!」
と、話し始めると、彼は口をつぐんで
最後までわたしの話を聴いてくれました。
そして、全部聴き終わった後で、彼は静かに口を開き
「秋になったら、うちで作った干し柿を持ってこようかなぁ。芸術品とはいかない家庭の味ですけれど。家族には共感してもらえないんですが、僕は干し柿が大好きなんですよ」
と答えました。
好きなものが共通していれば
感情を理解しやすいので、とても嬉しくなります。
大抵の場合、わたしもそうなのですが
この話題の冒頭の部分
「わたしは、あんぽ柿が大好きなんです」
のところで
「あ!僕も好きですよ!あんぽ柿!」とか
「わかるぅ~!わたしも美味しいと思うよ、あんぽ柿」
と、まず共感を表す返事をして
お互いにグッと距離を詰めて盛り上がります。
いわゆるノリのいいひと、ということになります。
「会話が盛り上がって楽しかったなぁ~」という印象。
それはそれで、とても素敵なことなのですが
わたしは、会話の最後に
「僕も」干し柿が好きなんですよ、と共感を伝えられる方が
なんとなく、心にしっかり残る話になったように思いました。
自分の語った話が相手に伝わったという満足感もあるし
相手のことについて知る発見も
インパクトが少し大きくなったように感じます。
コミュニケーション能力とか
会話術というと
「打てば響く」というスピード感を重視しがちですが
こういう、ゆっくりと会話を楽しむひとに出逢うと
「かなわないなぁ」
と、尊敬してしまいます。
秋になったら、食べられるのかしら?
彼の家の、手作りの干し柿。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?