能楽堂アンティゴネー役作り②手放す
どうやって大きなエネルギーを生むか?
これが課せられたお題でございました。
自分以外のものにいかにやってもらうか?
自分以外の何にやってもらうんだよ?みたいな話ですが、俳優にもZONEみたいなのがあって、私の今回はZONEよりももっと手前の、知性を手放す。コントロールを手放す。くらいなことなんですが…
手放すと予想外のことが起こったりします。
逆に手放さないで自分のマインドでやってる時は、はっきり言って面白くないです。全てが想定内、あざとかったり、考えすぎだったり、頑張りすぎてエモーション(作った感情や感情的なもの)になったり…正しいけど、で?何か?って感じ。そこには『何か』が足りない。つまらない。やっててどこかしんどいし、やってる自分を知っている自分がいるので恥ずかしい気持ちになります。
問題は「手放す」
手放す。手放す。手放す。。。と呪文のように唱えても、結局は自分でうまくやろうとしてしまい、力みすぎて結果はさようなら。。。な日々。
『手放す』ったら言葉が降ってきて頭にこびりつくようになったのは、システムをはじめて3年目くらいのある日。ワーニャの舞台に出る時だった。そこから15年は経ってる。。。💧
頭で言い聞かせても難しいのはなぜなのか?
まずは、
何を手放したらいいのかわからない。
どう手放したらいいのかわからない。
これって、私が特異的にできないだけかもしれないけれど。
最初は、「手放す」以前の話。緊張して注意や意識のコントロールが効かない。否。注意をコントロールしなきゃならないことさえ知らない。ワーニャの一幕、ソーニャでお茶を出さなきゃならないのだけど、カップ&ソーサーが震えてカタカタいって仕方ない。笑。必死っす。とにかく、結果出さなきゃならないと無意識の強迫観念だった。
この頃は、むちゃくちゃ緊張のエネルギーがあるから、反転すると、めっちゃ高く飛んだ。なんだか、わからない感情の渦みたいなのが知らない間に終わらせてくれる。自分でもこんなものが出てくるのかと驚きながら手放していた。
これは、beginner's luckに近い。必死だからこそやれる技だ。むちゃくちゃ緊張と恐ろしさでやるしかない。緊張が圧縮されて圧縮されて何かの拍子に弾ければ爆発的なエネルギーがでる。
ただねぇ。これは続いて5年。
それからはスランプ。
私の精神は騙せない。もうその手にはならない。もう飽きた。と何も動かなくなる。
一生懸命、とにかく、無我夢中でやる。
が、効かなくなった。
そこから、何もできなくなった。何をやっても「エモーション!」と叫ばれ続け、メインでやっていた役、三作品を下された。本番前に下されたこともある。
何も心に響かないから焦りばかりが出て、とにかく感情らしきものを出さなきゃ出さなきゃとエモーションになる。その根底には小さな頃からのコンプレックスや自信のなさが目白押し。見捨てられ不安も手伝って、それはまーポロポロ。悲惨なものである。
必死でシステムを「勉強」した。
勉強して、理論的に理解した。
どこにも遊びにも行かず、ずっと勉強していた。
でも、できない。スタニスラフスキーシステムは頭でわかるものではない。
頭でわかっていても、心も体もどうにもできない。
頭は無力だ。