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創作)アメシスト・メモリー
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「やっと着いた。ここが、〝幻の村〟か」
木製の標識板には旧字体で「叉鬼村」と彫られている。塗装もされていないその標識はいかにも古めかしく、不気味さを物語っていた。僕は覚悟を決めてその文字を睨みつける。
県道〇号線から山に分け入り、獣道を三十分ほど進んだところにその集落は存在していた。
見渡す限りの青田にはまだ発育途中の稲の隙間から太陽の光が水面に反射してきらきらと煌いている。所々に家
創作)ドリームスフィア 2 回想
僕が生まれたのは白い部屋に並べられた樹脂製の透明な保育カプセルの中だった。らしい。
生まれたときの記憶なんて覚えているわけがないが、人口の100%がそうやって生まれてきているらしい。システムにより管理され、必要なときに必要な分だけ人間を出産することで、環境のバランスを保っているのだ。
保育施設には、中学校の社会科見学で一度だけ中に入ることができた。
「世界の人口はコンピューターによって
創作)ドリームスフィア
第1章 奇跡の球体
世界中のありとあらゆる有名人、政治家、資本家がそれの完成を見守ってた。
それを作ったのは一人の老人だった。
年季の入った木製の作業台。老人は雑多に散らばる工具を無造作にどかし、完成品を入れた箱を置く。
世界中が、彼の手元に注目する。
静寂の中、彼は箱を開けた。
箱の中のそれは、両手で包んでも包みきれない大きさの球体だった。
喝采が巻き起こった。
全人類が待