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2020年度に創作した詩

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有島緋ナとして、初めて有料で公開した詩のマガジンです。 作者である私がラジオ配信で朗読したものございますので、あらかじめご了承くださいませ。 ヘッダー画像について https:…
すべてオリジナルで、今後の更新頻度は二週間に一度を目標にしております。 マガジンをご購入いただきま…
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雨音

風が抑揚をつける雨 防音サッシで静かに過ごしたい 猫が気にする 廊下の音と 同じぐらいに 入り込む雑音 どれがきれいで どれがうるさい 決めていいなら 今日は後者 部屋の空気を混ぜる扇風機 なくてもいい部屋に住んでみたい 夜 気になる階上の音と 同じぐらいに 響く雑音 どれが風雅で どれが低俗 決めていいなら 今日は後者 明日の空は 白になるとか 風が響かなければ それでいい どの日が好きで どの日が嫌い 決めて良いなら 明日は前者で 弱い音が ときどき流れ

途絶

頼りなく歩くのに 元気に見えるって たぶん 自分がそうしてきたから 基準がおかしくなってる 外の世界と自分とが 違いすぎているんだ やんわり聞こえたこともあるけど 消えないものは消せない 痛そうですか 辛そうですか すみません わからないです どちらも無視されたから おかしな仕草は隠し 普通に見えるって 矯正して ごまかせるから これが ただ一つの特技 そこにあった環境が 違いすぎているんだ 社会へ出てから気づいても 自分で作り直せない 痛そうですか 辛そうですか

誕生日

縮こまる 風の怒り 雨の悲しみ どうして バリアの中まで 刺さってくるの 文字も 言葉も 痛くて 誰とも 話したくなくて チョコを食べ過ぎた 明日は 何十何回目の 誕生日といういうものらしい いったい誰の? 乾いた部屋 エアコンの音 静電気が盛り上げた冬毛で走る 三毛猫 足りないものが わからない ひとりで ただひとりでいたいと 願った 明日は 何十何回目の 誰かの記念日だったっけ いつ落としたの? 昨日と今日と同じ明日 作り笑顔で過ごせば 翌月お金になる より

ベッドメイキング

カーテンの隙間は まだ暗い 明け方の静けさ 眠れなかった 弱さ強さ 迷ってから気づく 灯りをつけ 文字を追おうか まぶたはだるく 上がらないけど カーテンの隙間が 少し明るい 動き始めた世界 ほんの少し前の自分みたい 何も知らずうれしく 重力に逆らい 起き上がれば 強い風に揺れる サッシの音 埃をとり 匂いを消して もとどおり カバーを美しく掛けた

宝石箱

扉を開けてみて 溢れ出す キラキラしたもの 描いた夢の 欠片だったり 探した理想の 切れ端だけど いつのまにか 磨いていた いつのまにか 光っていた さあ 安心して追いかけて あなたがみつけた星だから

明け方の夢

たどり着く公園で 芝生を 軽やかに歩く 明日も晴れる? そんな問いを投げかけて 芝生を 軽やかに歩く 透明な靴を預けて 答えは 明日の風の中 届いたら 開けてみて 誰も見たことのない 心を 贈ったから

クリスマス配信

リクエストどおり ノンアルコールの微炭酸 画面の向こうで「聞こえる?」 確認してる 君の横顔 センスの良い配置 後ろの飾りつけ 普段のニットが似合うね そして 乾杯をした いつもの年なら 会えない 見えない笑顔を 分けてもらえた 今夜は 特別な クリスマスイブ 甘えた鳴き声が 画面の中で小さく響く 普段の音を聞かせてくれる 落ち着いた 君の声 せつない思い出話 BGMはSE いつか聴いた音が流れ そして 温かい瞳 これまでの年なら 知らない 意外すぎる本音 教えてく

新しくない世界

聞こえなくなったサイレン 慣れてしまったのかな あんなに人がいない街を見て 変われるかもしれないと思ったのに 良くない戻りかた 底に溜まった不安が叫び出す どんな考えも自由でいい 信じたいものを信じればいい 押しつけなければ 巻き込まないなら その駅の中央改札前では 怒鳴っていた「騙されている」 大きな声は 耳を塞ぎたい 聞きたくないよ 怖いだけだ 私がいないところで 好きなだけ 威嚇すればいい どんな考えも自由でいい 信じたいものを信じればいい 脅さなければ 捻じ

九つのあなたへ

明け方 ぼんやりとした空気 肌を刺すいくつかの痛みの前で 今日も 変わらず 上り 沈む ある一面だけの天体 身を包めと誘う 忘れろと説く 感覚を零下まで 解放できると 色も温度も移り変われば 小さな自分が 消えると信じた 永い記憶は 失われて きっと 美しく羽化するのだ 凍えていた ひとりの夜を思い出す 皮膚の痛みと 寂しさの痛みの前で その夜も 変わらず 上り 沈んだ 美しい姿を保つ 狂ってしまえと誘う 逃げろと説く ほんのわずかな羞恥心を 捨てられず 色も温度も

冬晴れ2020

ここは2階なのに 電線のない空が見える 今の私の小さな広い世界 あのころのあの場所にはつながらないけど どこかにいる君には見える 鳥が鳴けば ベランダへ出て 借景の椿の満開を眺め 誰かがバルコニーでタバコを吸う フィルムのように 流れていく ここは街中なのに 足音は 廊下だけで響く 今の私の小さな小さなお城 歩くのが好きだったころには戻れないけど 万の一つ コメントならできる 会場に入ると SEが流れた 機材が配置された舞台を眺め スマートフォンの電源をそっと切り

コトバノヒカリ

言葉を体現する姿 目を逸らさず 見つめた 翌朝は 冷たく曇る空に 決意を反復した もうすぐ このおかしな時代の 年の瀬がやってくる どこにも 見通しがない 絶望と 僅かな希望を持て余そう 明るい響きの中には 追い詰める場面を孕んだ 本当は 覚悟を映した音に 決意が揺らいでしまう もうすぐ こんなおかしな自分の 新しい時間がやってくる 知らないことが多過ぎる 光と 途方に暮れて迎えよう もうすぐ このおかしな時代は 次の時間を迎えてしまう もうすぐ こんなおかしな自

ONLINE LIVE CONCERT

文字しか この頭にはないから 歌詞を追うこと 全身の表現 目を凝らし 画質の悪い一部始終 釘付けで なぞっていた 過去にない スタイルと色が 最初に見た世界を連れ 泳ぐ その次への繋がりをもたらす 新しい音の配列も見つけ 知っている 表情 身振り 何も変わらない姿が映っていた 手の動き 全身からの言葉 大切な 大切な 始まりの人 新しい世界を開いた曲へと 歌詞は追えないのに 心が 誘われ 次の姿を眩しく 釘付けで 眺めていた そこにいる人は 確立した 新しい音の配列を

不調のロンド

朝がこないままでいい 目が覚めないままでいい 猫のことなら 信頼できる人がいるし 仕事なら もはや必要ないらしい さあ 浅い眠りの夢の続きを 結末までは まだまだ 遠い 家族 そんな良いものではないよ 友人なら 少ないことが美点 さあ セピア色の夢の続きを 次の場面は アリアを高く 朝がこないままでいい 目が覚めないままでいい 大したものは 持っていないし 誰かが 欲しがるはずもない さあ うつつになかった無茶を ここから 飛んでみたかった 君を 見つけなけれ

最後列のVIP席

何も気にせず 深く座り 登場する時刻を 待っている 今夜の夢は どんな広がり 歌う世界を連れてくるのでしょう 後ろには 機械がならび いつからか その手にかかると知った 今夜の夢は どんな道のり 導かれて行くのでしょう その様子を 最良の音で聴いて どんな気持ちが 溢れてくるのでしょう この席は 今夜 他の誰も座れない 幸運を連れたまま 駅へ向かう 上書きの音は いらない このまま 眠って 忘れない