#旅する日本語 #万福 (まんぷく)・・・幸福の多いこと。数え切れないほどさまざまな幸福。
食卓に20ほどの皿が並ぶ。卵焼きや焼き鮭やイクラが日差しを受けて輝く。北国の朝。
「あんたたち、そうめんって何束食べる?」
義母は座った途端、夫と私に話しかける。
「2~3束かな?」
「やっぱりそう?広島のおばさんのところも2束なんだって」
義母は一呼吸おいて
「私たち8束食べるの」
「8束!?」
思わず聞き返す。
「さすがにちょっと多いかねぇって、7束にしたの」
「そんなに変わらないじゃん」
夫がすかさず突っ込む。義父が笑う。
「でもねぇ、7束だと足りなくて、おにぎり食べてしまったの」
「減らした意味ないし」
4人の笑い声が響き渡る。
「お父さん、夏でも食欲が落ちたことってないねぇ」
「そうだなぁ」
海苔に手を伸ばしながら義父がうなずく。
お湯で薄めたみそ汁の上で度々止まる義父の箸。「万福だ」とお茶を飲む少しやせた手。
支度して空港に向かう。
また来るからね。あまり寒くならないうちに。
次もこんな朝を迎えられますように。
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