自分から学ぼうとするメカニズム
早く済ませたらなんてことないのに…と思うような宿題内容でも、
鉛筆を削るのにこだわったり、
声掛けをしても「今やろうと思ってたのに!」と
やる気を無くされましたというような様子で
毎日苦痛ですという保護者の相談があった。
相談者のお子さんの様子を見るとやる気の問題もあったが、「どう学習していいかわからない」というケースがあった。
だから机にどう向かうべき変わらない、前に進まない、やる気も起きない。
勉強・宿題にさほど抵抗がない子は「辞書で調べたらいいや」「先生に尋ねよう」「わかるところからやろう」等、自分なりに学習の方法を習得している。
覚えればいいんだ!という学びを得てしまう子も多くいる。
暗記が得意な子は向いているかもしれないが応用力を欠いたり、効率の悪さが何より欠点で学習も楽しくない。
ではこれらの悩みについて教員・支援者はどう考えるべきか。
どうしても動機付けばかりに目が行ってしまうがその前に重要なことがある。
まずは「学習に対して、自分が理解できているかどうか」を正しく把握しなければならない。
理解に対するモニタリング
理解に対する評価は3つに分かれる。
・理解できた
・理解できなかった
・理解できなかったのかどうかわからない
この評価は自分自身の理解の状態を把握するため観測した結果、判断される。
この機能を「認知的理解モニタリング」という。
この認知的理解モニタリングはいつも正しいわけではない。
自分自身の学習の状態を把握し、評価し、学習の方法を調整する頭の働きを「メタ認知」という。
そのメタ認知も2つに分類され、「メタ認知的活動」と「メタ認知的知識」からなる。
また、メタ認知的活動は認知的モニタリングとメタ認知的制御(コントロール)からなる。
イラスト引用:https://learn-tern.com/meta-cognition/
ある課題について学習した場面で考える。
・「理解できた」と評価した場合
実際に学習した内容が理解できていれば
メタ認知的理解モニタリングが的確だったことになる。
実際には学習した内容が理解しておらず、
「理解できた」と評価しているとなると
メタ認知的理解モニタリングが的確に行われていないことになる。
理解できたかどうかわからない場合も同様に、メタ認知的理解モニタリングが的確に行われていないことにあたる。
理解と記憶も含めて、このメタ認知的理解モニタリングを的確に行うためにテストがある。もちろん評価として使われるケースが多いのではあるが、どこか正しく理解していてどこが理解しきれていないのかを関わる側が判断する材料になる。このどう取り組むかという試行錯誤や戦略をメタ認知的知識という。
テストという材料から行える支援
保護者の多くはテストの点数に目がいく。
成績表なる評価も数字で、そこに具体性を持たないケースも多い。
算数が苦手だという相談ケースで多くあるのは、実は算数の問題文の理解が困難という国語力の問題だったりもした。
そこで支援者としてはテストは見られなくても、宿題をテストとして仮定し理解力を把握するように努めるべきではないかと思う。
メタ認知的知識を支えるのだ。
ただ、達成させる目的で宿題を支援するのではなく
つまずきを見つけてフィードバックすることが大切である。
上記したメタ認知的理解モニタリングの話に戻るが、これはある程度自分を客観的に見るという能力が必要とされる。
「自己」という枠がハッキリとわからない年齢の子どもも多いだろうと考えると、やはり自分で鍛えることは難しい。
そこで必要とされるのは適切なフィードバックである。
ここは理解できてるね、
こっちは難しいみたいだから一緒に解いてみようか!
出来ているところを言葉で伝える。
理解できていないところは相手に提示するが、
その原因を相手から聞き出そうとしないで一緒に考えていく姿勢を見せる。
その後に問題への取り組みを一緒に行う。
あるひとつの問題に対して
スモールステップで評していくことから始めよう。
・文章問題への問いの理解
・文章から得られる情報の判断
・式をたてる
・計算をとく …など
ざっとこのようなステップがスタンダードであると考える。
・文章の理解が難しいのであれば
イラストにおこす
・得られる情報で大切なものは
アンダーラインを引く…など
対処を身に着けることで効率を上げていくことが可能となる。
このような学習の時間を積み重ねる中で、動機づけが初めて効果を出す。
得意なことや簡単なところから勉強を始める
負担軽減方略
勉強が終わったらおやつ等、報酬を使う
報酬方略
友だちと一緒に勉強
社会的方略
などなど動機づけは種類がさまざま。
自分から学ぼうとするメカニズムへの目的となる。
沢山の課題をこなすよりも
子どもの学習に対するストレスが解消されたことで
成績が良くなるということも実証されている。
大人が動機付けを手伝う前に、
動機付けが効果のある状態か見極めるのが
支援者や教師の目の付け所に
なるのではないだろうか。