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炎が街を飲み込んだ日

日本では「山火事」と報道されているようだが、今回の火災は早い段階からすでにただの山林火災ではなかった。1月7日の午前に複数の地域で発生した火災は午後には住宅密集地付近まで及び、多くの住民が避難を強いられる事態となった。8日朝、現場の様子を伝えるテレビのニュースの映像をみて愕然とした。午前7時、既に日が昇り明るい時刻なのに、現地は黒い煙が空を覆い真夜中のようだ。そして未だ燻り続ける炎をバックにレポーターが立っているのは、人里離れた山奥ではなく、どこにでもあるような住宅街の通り。道路の両脇には家々の瓦礫と黒焦げになった車が並んでいる。山火事の多い南カリフォルニアではあるが、まさかここまで燃え広がるとは、誰が想像しただろうか。

数日前から強風のために火災に注意するよう警告は出ていた。電線が切れて発火する恐れがあるため、一部地域では7日朝から計画停電の措置も取られていた。しかし火災が発生し、しかも強風のために消防ヘリなどが飛ばせず、火災発生からほぼまる1日、空からの消火が出来ないまま、強風に煽られた火の粉が住宅街まで及び、住宅に火をつけ、燃え広がった。

例年ならロサンゼルスは雨季に入っている時期だ。しかし雨季どころか、半年以上ロサンゼルスには記録できるほどの降水量がなく、異常な乾燥状態だった。しかも、去年と一昨年の冬に大量に降った雨のおかげで草木が茂っていた。よく燃える乾いた「燃料」が大量にあったわけだ。

どこからか急に火の粉が飛んできて建物などに火をつけるため、火の周りが速すぎて避難指示が追いつかなかったようだ。サイレンの音に気づいて窓の外を見ると、すぐそこまで炎が迫っていたケースもあったらしい。慌ててご近所のドアを叩いて知らせ、避難したというから、本当にギリギリだったのだろう。

8日夜、ローカル局のニュース映像は炎に包まれたある4階建の大きな家を何台もの消防車が取り囲み、懸命に消火にあたる様子を報じていた。燃えさかる炎はホースで水をかけ続けても一向に収まる気配を見せるどころか、どんどん勢いを増し、熱のためか柱がぐにゃりと曲がったかと思うと一気に崩れ落ちてしまった。炎がこんなに恐ろしいものだとは思わなかった。そして一旦自然が牙を剥くと人間はなんと無力なことか。

普通の街が数ブロックに渡り一面の焼け野原になってしまった光景に心が痛む。学校、教会、レストラン、スーパーマーケット・・・住宅に加えて、コミュニティを形成する土台も失われてしまった。10日現在、この火災で命を落とされた方は10名だとの発表があるが、これから捜索が進めばまだまだ増加するだろう。

一刻も早い鎮火を願うとともに、被害に合われた方々に心よりお見舞い申し上げます。


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