学習性不使用
タイトル
中年期および壮年期における脳卒中発症者の麻痺側上肢の学習性不使用の発展
著者名
森井展子、大塚栄子、吉野眞理子
雑誌名
作業療法
公開年月日
2020年2月
研究の問いや目的
本研究の目的は、中年期および壮年期に脳卒中を発症した者が麻痺側上肢の学習性不使用に至るプロセスを、その語りから明らかにすることです。
研究や実験の方法と結果
対象者は、脳卒中発症後に麻痺側上肢を使用しない状態に至った中年期および壮年期の脳卒中発症者8名でした。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて、半構造化面接による質的分析を行いました。分析の結果、20の概念、4つのサブカテゴリー、4つのカテゴリーが生成されました。対象者は、脳卒中発症前との比較を繰り返しながら、非麻痺側上肢を用いて役割を担える自分の回復に成功する一方で、麻痺側上肢に対する「まだ使えない手」という認識を深めていくプロセスが明らかになりました。
研究や実験の結果から得られる影響
本研究の結果、麻痺側上肢の学習性不使用のプロセスは、社会的相互作用の中で形成されることが示されました。特に、周囲の人々との関係性や役割の再構築が麻痺側上肢の不使用に影響を与えることが分かりました。また、作業療法士の働きかけが麻痺側上肢の不使用を促進する可能性があることも示唆されました。
この論文の結論
脳卒中後遺症者が麻痺側上肢を使用しない理由として、身体機能の喪失や役割の変化、非麻痺側上肢の代償的な使用があることが明らかになりました。また、麻痺側上肢の使用を促進するためには、リハビリテーションにおける具体的な使用方法の指導が重要であることが示されました。作業療法士は、脳卒中後遺症者が主体的にリハビリに取り組めるような関係性の構築と訓練方法の工夫が必要であると結論付けられました。