メルヘンの国のマイスター ハンス・フィッシャー
姫が割と長めの絵本も集中して聞けるようになってきました。
最近のお気に入りは「ブレーメンの音楽隊」。
我が家の「ブレーメンの音楽隊」の絵本は、メルヘンの国のマイスター スイスの絵本作家ハンス・フィッシャーが挿絵を手掛けているものです。
昔から絵本作家を始め、子どもが関わる作品を手掛けるアーティストのヒストリーを知るのが好きで書籍などを読んだり展覧会に足を運んだりしているのですが、フィッシャーについては10年近く前に「こねこのぴっち 絵本原画展」を見てから大ファンになりました。
会場には「こねこのぴっち」を始め、「ブレーメンのおんがくたい」、「長靴をはいた猫」などの美しい原画がズラリと並んでいました。
フィッシャーの独特の絵は、長電話をしているとき、よくメモ用紙にぐるぐる線を描いたり、棒を引いたりする、そんな筆運びの絵で、それをテレフォン・ドローイングというのだそう。
鉛筆やサインペンで描かれる落書きチックなテイストです。
私のいちおしは“メルヘンビルダー”と呼ばれる、ひとつのおはなしを1枚絵で表すもの。
フィッシャーの魅力がギュッと詰まっています。
よく見ると、1枚の絵の中にストーリーが見事におさめられています。
サイズも大判なので結構迫力があります。
こちらは赤ずきんちゃん
絵は1枚だけなので、ほとんど文字ばかりの絵本で大人向けですが、絵本好きな方にはとてもオススメです。
惚れ惚れする美しさ。
愛らしくて素敵な絵本をたくさん残したフィッシャーですが、絵本以外にも子どもたちに残したとっておきの宝ものがあります。
第二次世界大戦が終わるころ、教育において大きな改革の試みがなされていました。
小学校低学年用の教科書は、ある子どもにとっては本との最初の出会いになるかもしれず、そしてそれが決定的な出会いになり、その後の本のつながりに大きく左右されることになります。
子どもたちが喜んで手に取り、読み進めたいと思うような本こそが教科書のあるべき姿ではないか。
チューリッヒの小学校の先生だったアリス・フーゲルスホーファという先生の、この問いかけによってフィッシャーの挿絵が入った教科書が生まれ、そしてその教科書は、世界一美しい教科書といわれているのです。
こねこのぴっち 絵本原画展では教科書の原画も展示されており、フィッシャーの仕事観やフーゲルスホーファの思考に深く感銘を受けました。
子どもは、事柄を事柄として説明しても、それを受け入れるだけの理解力は備わっていない。
彼らは子どもらしい空想で、ものにいのちを吹き込み、それらが生きているかのようにまわりの世界を受け止める。
その感性は詩的で、空想的で、芸術的なものである。
そこで「ことばを理解してもらうための演出家」としての役割が、挿絵を描く画家となるわけです。
画家は、ことばに内側から光を当て
それを絵として浮かび上がらせ
子どもが世界を理解できるように橋を架ける。
この思考は、私が仕事で童話や絵本に音楽を添える時の大切なベースとなりました。
フィッシャーは、あるときから教科書の挿絵を色鉛筆で描くようになります。
それは、子どもたちはたいてい色鉛筆で印をつけたり、絵を描いたりするから。
子どものことばで、子どもたちと語ろうとするなら、それが一番いいと考えたのでした。
これが教科書の挿絵?!という衝撃。
レオニの原画展を訪れた時も思ったことですが、あくまでも自分を、子どもの高さに合わせるということではなく、子どものことばで、子どもたちと語るということ。
それができる大人は実はとても少ない気がします。
絵本作家の仕事から、子どもたちとの向き合い方について学ぶことはとても多いと感じます。
個人的にお気に入りの絵本作家では、他にハンガリーの作家カス・ヤノシュという人がいて、彼も教科書の挿絵を手掛けており、絵本も教科書もとても素敵なので、また記事に書きたいと思います。
(姫 3y1m・小姫 0y3m)