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オフィスひめの通信 4号

執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2010年6月

-なぜサプリメントが必要か?-

 最近、サプリメントの害についての警告が目立ちます。自分たちが批判されているようで大変悲しい思いをしますが、皆さんにも知っておいていただきたいことが二つあります。
 一つはサプリメントと一口で言ってもその質は玉石混淆で、製造過程が本当に信頼できるのか、効果のある物質が含まれているのかはメーカーによっておそらくかなり異なります。もう一つは、効果についてです。私たちの行っている栄養療法は「××を飲めば○○が治る」などという簡単な言葉で語れるものではありません。実践する方に理論と方法、効果の意味を正しく理解いただいて成立するものです。前回の繰り返しになりますが、栄養療法の本質の一端を今回もう一度聞いていただきたいと思います。
 分子整合栄養医学の「分子整合(orthomolecular)」はとても深い意味を持っています。orthoは「正しい」molecularは「分子の」という意味です。体の隅々まで――細胞内、血液内、細胞間液にいたるまで「(分子のレベルで)本来のあるべき状態にする」ことがこの治療の本質です。
 皆さんは治療を受ける時に「病名」というのを気にしますよね。むしろドクターにその傾向が強いかもしれません。「分子整合」栄養医学は目指すところがちょっと違います。「体の機能、物質の合成、体内に存在する物質の量」を「理想のこうあるべきだという状態にすること」です。どんなにたくさんの癌細胞を持っていようとも、肺気腫のようにもとにもどりにくい病気を持っていようとも「体が十分な機能を発揮してくれれば」人間は幸福に生きられます。相手を完全にやっつけて治すのとはちょっと「治す」の定義が違うかもしれません。癌の化学療法医の中にはサプリメントを目の敵のようにしている方がいますが、栄養療法は手術、化学療法、放射線療法などをサポートする手段にもなり得ます。
 サプリメントについて批判する多くの方は、栄養療法がサプリメントを使用する理由を本当にはご存じないのではないでしょうか?理想の状態を実現するのに「サプリメントなしでは不可能な人がいる」のでサプリメントを使用しています。食事だけ、サプリメントなしで実現できればそれに越したことはないのです。
 実際問題、理想の状態を実現するには大変な困難が伴います。本人が本気になって食事に取り組むのはもちろんのこと、現実にはほとんどの方で複数のサプリメントが必要になります。症状が重い方ほど量も種類もたくさん必要になり、生活金銭面にかなり負担になっていることは承知しています。「遺伝的体質はこんなにも不公平なのか」と呪いたくなる瞬間です。それでも栄養療法は人々に希望を与えると信じています。しっかりとした方向性があり努力が報われ、実行すれば実行するほど意欲がわいてくる素晴らしい治療法です。栄養療法を選択した方すべてが、分子整合栄養医学の本質を理解し「Co-learner(共に学ぶもの)」として歩んでくれることを望みます。


ビタミンB群 その1 ~生命活動に重要な補酵素とは?~

 細胞は勤勉に働く製造工場です。細胞の中はただの液体ではなくいくつかのコンパートメントに分かれていて、運び屋のたんぱく質や機械に相当する酵素は整然と場所が定められていて能率よく作業が進められています。ちょっとした濃度の差で合成の速さが変わり美しいばかりの調節機構も働いています。
 そのような工場で小さくても重要な働きをしているのが補酵素です。アニメなどで人間がカチッとはめるとロボットに生命を吹き込む装置を見たことがありますか?補酵素もまさに同じで酵素に生命を吹き込む働きをしています。糖質・脂質・アミノ酸の合成や代謝に関係して見つかった補酵素がビタミンB群です。ですから、ビタミンB群は生命活動にとっても重要です。
 補酵素がないと、酵素は働くことができません。酵素自体の寿命も短くなってどんどん壊れてしまいます。製造工場の中で一つの機械がとまったり、 壊れてしまったらどういうことが起こるでしょう?その生産ライン全体がとまってしまいますよね。
 体の中でも同じことが起こります。ですから少なくともビタミンB群は8種類全部が同じようにそろっていないといけないし、たんぱく質や鉄、亜鉛といったほかの部品が足りなくなっても生産ラインが止まってしまうのです。パントテン酸の発見者ロジャー・J・ウイリアムズは1971年に出版した著書の中で「体に必要な栄養素の一つが欠けてもうまく機能しないこと」をすでに指摘しています。どれか一つのビタミン剤を飲んでも症状が改善しないのはそのためです。次回からは、ビタミンB群の中のいくつかを取り上げて主な働きについて説明していこうと思います。


食事療法の嘘?本当?~低血糖症について~

 今回は「機能性低血糖症」について取り上げてみようと思います。インターネットの普及によりようやく「低血糖症」という言葉が少し皆さんに知られるようになってきましたが、医師の中ではまだ「インスリンや血糖を下げる薬」と「インスリノーマ(インスリン産生腫瘍)」以外に低血糖が起こることはないと思っている方が大多数です。ところが、自己血糖測定器で血糖値を測ってみればわかりますが、薬を飲んでいないのに一日の血糖値が大きく変動したり、一日の多くの時間血糖値が70以下と低かったりする方がたくさんいることがわかりました。これは体本来の持つ血糖の調節機構がおかしくなっているので「機能性低血糖症」という名前で呼んでいます。自分も低血糖かなと思ったら「自己血糖測定器」で血糖値を測るか「5時間糖負荷試験」を受ければ診断できます。
 一番覚えてほしいことは「低血糖の人は低血糖の時も普段も糖分を摂ると返って悪化する」ということです。病院に行って血糖値が低いと「ぶどう糖」を飲んだり点滴をしたりしますが、これは薬やインスリンによって血糖値が下がった時だけの話です。確かに血糖値が上がれば一時的に症状が楽になりますが、そのあとでもっとひどい状態になってしまいます。低血糖の診断についてと治療法についてはこれからも何回か繰り返し取り上げていきます。低血糖専門の管理栄養士が栄養指導を行っています。低血糖かなと思ったらぜひご相談ください。


※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。

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