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オフィスひめの通信 55号

執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2017年10月

ー卵子栄養療法に込めた願いー

 卵子栄養療法外来を正式にオープンいたしました。これまでも不妊治療の栄養学的なサポートをさせていただいていましたが、今回の開設によりさらに多くの若い方に栄養の正しい知識を知っていただきたいと思っています。
 卵子栄養療法では、すべての女性が輝くお手伝いをしています。不妊治療をしているのになかなか妊娠できない方、自然妊娠を希望されている方、これから妊娠を考えている方はもちろんのこと、不調に悩むすべての方が対象です。また卵子栄養療法と命名していますが、不妊に悩む男性の方のサポートも受け付けています。
 若い方は無理がきき、よほどのことが無い限り病気のことを考えたり健康のことを心配したりすることがありません。でも若い時の無理が卵子の老化を早めているとしたら・・・。卵子には一つ大きな特徴があります。それは女性が生まれた時から未成熟な形で体内に眠っているということです。卵子はその人の歳と同じだけ歳を重ねます。結婚や出産のことなどまだ早い、考えていないという若い方にも、もっともっと自分の体のことに興味を持っていただきたいです。

 卵子栄養療法外来では、次のようなことを重点的に行います。

●  卵子の成熟や細胞分裂に大切な栄養素を摂取する
●  子宮内膜をよい状態にする
●  ホルモンバランスを整える
●  卵子や身体の老化を防ぐ
●  ストレスをコントロールする
●  有害物質の蓄積について調べ、解毒や排泄を促す


 これまで多くの方に栄養状態を解析する検査を実施しました。皆さん驚くほど栄養が欠乏していて、しかもそれに気づいていませんでした。また健康によかれと思って実施していたことが老化や栄養欠乏の原因になっていることもありました。
 卵子栄養療法は妊娠を希望する方に限りません。ぜひ若い方にも訪れていただきたいと思います。若い時に骨や筋肉の土台をしっかり作っておくと年齢を重ねても元気で健康でいられます。赤ちゃんが欲しいという切実な思いをかなえたいのはもちろんですが、栄養療法は、その後の人生を輝かせる上で大きな糧になると信じています。


ー24時間グルコースモニタリング検査ー

 普段通りに生活しながら日常の血糖値の変動を推測できる検査が利用出来るようになりました。『間質液グルコースモニタリング検査』です。24時間、最大2週間の測定が可能です。この検査の利点はまさに24時間刻々と変動を記録出来ること!特にこれまで知ることの出来なかった夜間の血糖値の変動を推定できるのが大きな収穫です。
 夜間の低血糖は様々な症状につながっています。例えば、深酒をした翌朝に頭痛や気持ちの悪さを感じたり、長く寝ているのに疲れが取れなかったり、朝、体が重くて起きることが出来なかったり。これらの症状を持っている方に実際にこの検査を実施していただくと、ほとんどの方で夜間に低血糖を起こしていることが判明します。そして、夜寝る前の食事を変えることによって劇的に症状が改善する実例が続々と増えています。

 この検査は日中の症状の原因を調べる目的にも有用です。例えば急激なグルコース濃度の変化が、空腹時の動悸や、食後の眠気などの原因になっていることがあります。機能性低血糖症の検査に用いる『5時間糖負荷試験』は血糖値の測定が正確でインスリンの分泌パターンが同時に検査出来るなど情報量も多く有用な検査ですが、病院に拘束される時間が長いため、忙しい方や体調がすぐれない方には敷居が高い部分があります。それに対して、『間質液グルコースモニタリング検査』は、通常の生活を送りながら検査をする  ことが出来ます。
 空腹時血糖値が正常で食後の血糖値が高い潜在的な糖尿病を発見することにも有用です。また糖質制限ダイエットをしているのに痩せないという方が検査をすると、血糖値を上げないはずの食品で血糖値が上昇していたなど“隠れ糖質”を発見することも出来ます。検査出来る日数が長いので様々なバリエーションの食事をして食べてよい食品、ダメな食品の判定をすることも可能です。
 すでに糖尿病の治療薬を飲んでいる方やインスリンを打っている方にとっても有用な検査ですが利用する場合には注意が必要です。まず間質液グルコース濃度と血糖値には常にある程度の差があります。変動のパターンも間質液グルコース濃度の方はやや遅れて穏やかに変動します。測定値によってインスリンの量や薬の量を調節する場合にはこれらの差異を認識したうえで必ず担当医に相談しながら実施してください。


図.24時間グルコースモニタリング検査 日内変動グラフ(夜間低血糖の結果例)

上記の日内変動グラフは1日あたり一つ、測定日数分(最大14日)表示されます。
グルコース濃度80を下回る部分は赤で、140を上回る部分は黄色で色付けされています。


※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。

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