オフィスひめの通信 33号
執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2013年5月
-病気はなぜ起こる? 肺の炎症と病気 2-
肺の炎症シリーズの2回目の今回はアレルギー性の炎症を特徴とした気管支喘息についてお話ししようと思います。
体にとって異物を排除する炎症反応はとても大切なものです。問題なのは炎症が肺や気管支に起きた場合、咳や痰、呼吸困難といった症状や酸素不足に直結することです。アレルギー反応は刺激が少量でも気管支を狭めたり粘液の分泌を促進したりして強い呼吸困難を起こしてしまいます。
気管支喘息の症状が起きる仕組みを見てみましょう。アレルギーの原因物質が気道に入ると、気管支を囲む平滑筋の収縮が起きます。収縮した結果気道が狭くなります。同時に粘液の分泌が盛んになり栓のように気道を塞いでしまいます。この粘液栓は粘りけが強く外に出すのにかなりの労力を要します。気道の抵抗が強くなって吐き終わるまでに時間がかかるようになります。喘息特有のヒューといった喘鳴は狭くなった気道を空気が通る音です。
アレルギー物質がない時、症状がない時にも気道にはアレルギーを起こす白血球(好酸球など)が待機しています。見た目が正常でも気道が過敏な状態が普段から続いていることに注意を払う必要があります。
発作が繰り返し起きると、気道の壁は徐々に厚くなり粘液の分泌腺が発達してきます(右図)。常に気道が狭い状態になり発作がない時にも呼吸に力が必要になります。
気管支喘息の方は症状に慣れてしまうためかかなり悪い状態になるまで我慢してしまうことが多いようですが、アレルギー性の炎症も長く続くと気管支の状態そのものを変えてしまうのですから早め早めの治療が必要です。特に「気道のアレルギー性の炎症を抑え、過敏な状態を改善する」ことが大切です。薬の治療としては吸入のステロイド薬がかなり効果を示します。
風邪や感染症の後に喘息が悪化しやすいので感染症の予防や治療も重要です。栄養面では鉄やビタミンC、たんぱく質の摂取により粘膜や抵抗力を強化したり、腸内細菌バランスを整えて免疫がアレルギー反応に傾くのを抑えるのがよいでしょう。最近では免疫制御におけるビタミンAやDの役割が解明されてきています。欠乏している栄養素の改善は花粉症やアレルギー疾患の症状緩和や予防にも効果があるようです。
暮らしに役立つ栄養療法 ー副腎疲労症候群 2ー
体質差はあるものの副腎疲労症候群の発症には「繰り返し ストレスがかかっていた」「副腎皮質ホルモンの分泌が刺激 されていた」という状況が関係しています。副腎の予備力を 増やすためには、ホルモンの合成能力を増やす材料を増やすとともにホルモンが刺激されるストレス状態を出来るだけ減らす必要があります。
暑さや寒さ、怪我、感染などの外的な環境変化や、食事や生活スタイルの変化などもストレスになります。低血糖などによる副腎皮質ホルモン分泌刺激の繰り返しや精神的なストレスも大きく影響しています。
副腎疲労症候群と診断されたら、まず自分のライフスタイルや考え方に問題がないかを見直しましょう。ストレスをため込む人、人間関係が気になりやすい人は自分の捉え方を変えることでぐっと楽になることがあります。仕事と自分の時間のバランスを見直しましょう。「他人に迷惑をかけたくない」という気持ちが強すぎると体調が悪い時ほどたくさんの仕事を抱え込み、仕事の時間効率を下げていることもあります。
一度疲弊した副腎は、たっぷりの休息と栄養が必要であることを忘れないでください。すでに症状が出てしまっている時には副腎の予備力は枯渇しています。症状が出る前に比べて150%~200%の余力がある状態を続けてやっと症状が改善してくるのです。
食事と睡眠を大切な治療の手段と考えましょう。
副腎を回復させる栄養素-たんぱく質、ビタミンB群、ビタミンCなどをたっぷり摂りましょう。コレステロールが低い方はコレステロールも重要な栄養素です。
上手にサプリメントを利用しましょう。サプリメントにより早く症状が改善したり体の状態を回復させたりすることが出来ます。
副腎疲労は血圧の低下や低血糖を起こすことがあります。副腎疲労が原因で低血糖になっている方は血糖値を持続させる力が弱いため単に糖分をやめただけでは回復しないことも多く、極端な糖質制限をすると生活に支障が出ることがあります。副腎疲労の原因や治療方法は一人一人少しずつ違いますので、一緒に症状を確認しながらそれぞれに合った食事療法や ライフスタイル、ストレスの解消を工夫していきましょう。
ビタミンK ービタミンKを含む食品ー
お待たせしました。今回は以前お約束したようにビタミンKを含む食品と種類について説明します。
ビタミンKには植物由来の短いビタミンK1と長さがいろいろあるビタミンK2があります。ビタミンK2のうち人に大切なのはMK-4(メナキノン-4)とMK-7(メナキノン-7) です。MK-4は卵や鶏肉などの動物性食品に多く含まれ、MK-7は発酵食品(納豆など)に多く含まれています。
ビタミンK1は吸収や変換の効率が悪いので動物性食品と発酵食品からビタミンKを摂るように工夫しましょう。吸収されたビタミンKは最初に肝臓に蓄えられます。凝固因子合成などに必要なだけ使われた後血液に乗って全身に運ばれます。
MK-4は半減期が短い(すぐ壊れてしまう)ので実際に各臓器に到達できるのはMK-7です。各臓器に到達して細胞内で使う時にMK-7からMK-4に変換されて使われます。ですから、ビタミンKの作用を最大限発揮するには、植物由来のビタミンK1や動物性食品由来のMK-4ではなく発酵食品からMK-7を摂り、必要な時に必要なだけ変換出来るようにするのがよいでしょう。発酵食品を発明した人は本当に偉いですね。
※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。