②タイムマシン
ひめめ「過去に戻って何したいの?」
「……サッカー選手目指すかな」
俺は空を見上げた。
「子供の頃からサッカーが好きでさ、サッカー選手になりたかったんだよ」
「でも諦めた。だからもし、あの時諦めないでいたら、サッカー選手になっていたのかなあって」
「サッカー選手になった今があったのかもしれないって」
「今は……小さい会社のサラリーマンのおっさん。そんな現実が毎日辛くってさ」
俺は笑いたくもないのに乾いた笑いする。
ひめめ「ふうん」
桜川ひめこはおもむろに立ち上がり、手に持っていた魔法のステッキのおもちゃをふりかざす。
ひめめ「ひめめはね、タイムマシンに乗ってやってきたんだお!」
「タ…………」
やばい。
本格的にこの女はやばい。俺の本能がそう言っている。
この公園にいる子供達を守らなくては。避難経路はどうする?……まさか、この女の持ってる 魔法のステッキのおもちゃ、実は刃物がしこんであるんじゃないだろうか?こういうあたまのおかしい人間は何をしでかすか、分からないからな。何か武器になるようなものは……ッ!
ひめめ「この魔法のステッキがタイムマシンの鍵なの」
そういうと、フリフリッと笑顔でステッキを振り回す。
「…………」
「その……縁日の屋台で売ってそうなステッキが?」
ひめめ「そう、これはタイムマシンの鍵」
「……」
ひめめ「ひめめは、タイムマシンに乗って2008年からやってきたの」
ひめめ「この公園にタイムマシンの入り口があるんだよね」
「え」
よくよく考えたら、今の時代に、この衣装にこの世界観で、公園にいるのがおかしい。
しかし、
それはこの時代だからおかしいのであって、ホントにタイムマシンに乗ってやってきたのなら、おかしくないの……かも?
あの時代、メイド服の女の人がいても 何かの撮影かな?くらいにしか思わなかった。それくらい当時は、割とあった出来事だ。
……いや、いやいやいや!?!!
その考え自体、この女のペースに巻き込まれてるのか。いかんな、悩みすぎて弱っているからか?
でも、でも、でも………。
もし、
もしも。
もしそれがホントなら……。
「……ホントにタイムマシンできたの?」
ひめめ「そだよ〜!」
「…………」
「な、なら、俺。タイムマシンに乗って、過去に戻りたいんだけど」
ひめめ「サッカー選手になりたいから?」
「そうだ、やり直したいんだ!」
ひめめ「いいよ!」
桜川ひめこは、にっこり笑ってみせた。