#3 中高生に「校外」というチャンスを伝えたい! “校プロ”共同代表の高校生・佐野陽菜さん
《佐野さんのプロフィール》
名前:佐野 陽菜
所属:Loohcs高等学院、学生団体 校外プログラム大全 8代目共同代表、株式会社エイチラボ SHIMOKITA COLLEGE インターン(23年12月末まで)
年齢:16歳
座右の銘:Compass over Maps
コメント:
自分語り、というキーワードに惹かれて今回インタビューを受けてみようと思い、応募させて頂きました。自分語りを通じてこれまでの自らの過去に言葉を重ねながら、これまで迷走しながら模索し続けた道を想起し自己の原点に立ち返ることが出来たのではないかと感じています。なかなか人前で自分語りをする機会がなかったため、とても有意義な時間となりました。
これからも「ひまわりの種会議」さんの活動を応援しています…!
🌻
1.“校プロ”とは?
村田:事前アンケートを見ると、佐野さんは“校外プログラム大全”の活動に力を入れられているようですが、具体的にはどういった活動をされていますか?
佐野:2017年から活動している学生団体で、主に機会・情報格差の是正を目指して活動しています。学校外の学びのリソースを可視化するという目的でも、サイトを情報のプラットフォームのような形にして色々な中高生に見ていただくことを通じて、情報の均一化を図っていきたいという思いがあります。私で8代目になるので、けっこう長く続いてきた学生団体かなと思います。
村田:ありがとうございます。その活動を知ったきっかけや、参加しようと思った理由をお伺いしたいです。
佐野:きっかけとしては、私はお父さんの仕事の都合で小学校5、6年の頃にブラジルにいたことがあるんですけど、そのときに日本との違いに愕然としたことがあって。日本ではけっこうステレオタイプが激しくて、たとえば「太陽の色はオレンジで塗らなきゃいけない」とかがあると思うんですけど、ブラジルだったら黄色でも緑でも黒でも、なんでもいい、みたいな。そのように多様性を尊重する世界線があるんだ、というのを小学校6年生くらいの頃に、幼いながらハッと気付かされました。それから、ブラジルにはけっこう移民が来ていたこともあって、日本とブラジルの架け橋を築いていった人たちの存在にも気づいたことが、ブラジルでの滞在を通しての経験です。
その後帰国して、中学に入学したはいいものの、私の学校はけっこう閉鎖的だったので、積極的に意見を言っていくといった空気感がなかった。その時に自分の存在意義が揺らいでしまって、学校外で活動してみたいと思ったのがあります。
もう一つの意思決定の理由は、日本の空気感が合わなくて海外大学へ進学したいと思ったときに、学校外での活動というのが一つの評価基準として掲げられることです。そのときに校プロを教えてもらって、ちょうど新メンバーを募集していたので、これはすごく良い機会だなと思ったのと、自分の得意分野である「文章を書く」ということを通じて、学校と学校外の架け橋の役割を担っていきたいというのがあって。
村田:なるほど、ありがとうございます。では、校外プロジェクト大全の活動において佐野さんが行っていることを具体的にお伺いしたいです。
佐野:今は主に三つあります。一つは、“パイセン記事”と呼ばれる、プログラムに参加された方々のインタビューをしてその生の声を拾い上げることで、どんなプログラムがあるのかをお伝えしていくという参加者体験談の執筆です。二つ目はプログラム記事の執筆で、依頼を受けたプログラムについてWordPressで記事を書いて掲載しています。そして三つ目は、共同代表をやっているということもあるので、組織のコミュニケーションを円滑化させていくことであったり、全体を俯瞰して校プロには何が足りていないのか現状分析し、課題解決を促していくことであったりと、全体統括のようなことも行っています。
村田:共同代表って、かっこいい響きですよね。最近発見した課題などはありますか?
佐野:そうですね……初歩的な課題なんですけど、SNSの更新があまり追いついていないことだったり、あとは各記事によって部署が分かれているんですけど、その部署間での交流があまりないことだったり。もっと情報を円滑に回して組織内の活動を可視化していくべきだ、ということが課題に上がったので、ミーティングやSlackのチャンネルといった組織コミュニケーションの点で改善が必要だと感じています。
村田:なるほど。色々な部署があるということですが、全体ではどのくらいの人数が参加されているんですか?
佐野:約30人います。その中で「アクティブ人数はどのくらいですか?」と訊かれることもあるんですけど、いつも20人くらいは活動してくれているという印象です。あとはテスト期間だったり、他の活動があったりして休みがちな人もいる感じですね。
村田:なるほど。では、校プロの活動を通して印象に残っていることを教えていただきたいです。
佐野:印象に残っていることはマイナスからプラスまでたくさんあるんですけど、一つは、中学3年生のお正月くらいに当時の先輩方が「今の中高生のニーズを考えると、Podcastみたいに通学中に聞けるコンテンツを作ったらより効果的なのではないか」と提案し、Podcastの立ち上げという初めての試みに携わったことです。自分がやったことに対して先輩方が「それいいじゃん!」と後押しをしてくれたのもあって、一人で記事を書くだけでなく、協力して一つのものを作り上げていくという一体感を得られた瞬間でした。
村田:ありがとうございます。ところで、佐野さんが校外活動を探しているときにちょうど校プロが新規メンバーを募集していたとのことだったのですが、今も校プロは新規メンバーを募集していますか?
佐野:今はウェブデザインとウェブシステムに限ってメンバーを募集しているところです。組織内にテクノロジーやシステム系に強いメンバーが不足しているのですが、校プロの資本はウェブメディアなのでそこを強化したいという思いがあり、ウェブデザインやシステムに興味があり精通している中高生を募集しています。本来の、記事を書いてみたいというメンバーについては、春と夏に応募時期を設けているので、そこでチェックしていただけたらと思います。
2.転学のきっかけと「はじめの一歩」
村田:佐野さんは高校1年生で転学されていますが、その経緯などをお伺いしたいです。
佐野:ブラジルから帰ってきてから日本の学校に馴染めなかったものの、校プロでの活動によって自分の存在意義を保ちながら過ごしていて、高1のときにふと「今まで校外のプログラムについて発信している側だったけど、実際に参加したことがないな」と思い、自分の紹介しているプログラムに参加するようになりました。そうやって挑戦を始めた時期に、おばあちゃんが亡くなってしまって。会ったときに色々といい言葉をかけてくれたおばあちゃんだったので心理的なダメージを受けたのと、火葬のときに「人ってこんなすぐに骨になってしまうのか」と人間の命の儚さのようなものを感じました。
そのときから、自分は今の生き方でいいのか、中高一貫で何も考えずに進学した今の高校にいていいのか、などと日常の「当たり前」に疑問を抱くようになって。その時期、SDGsを探求する活動に参加していたんですが、「教育」というのがトピックの一つに上がっていたことで、今の学校の授業で私は本質的な学びを得られているのだろうかと疑問に思ったのと、試験終わりで精神的に疲れていて、学校に行けなくなってしまって。それが6月から7月にかけてのことで、本当に「引きこもり」というのを体験したんですよ。部屋に閉じこもって、カーテンも閉めてずっと寝ているみたいな。
そんな状態が7日間ほど続いたとき、ふと思い立って『地獄の花園』を見たんですよ。OLが本気でパンチしたりとか、あり得ないような、常識を外れたドラマなんですけど。それを見て、固定概念から外れて生きる逞しさのようなものに感銘を受けて、もっと私も自分らしくいていいし、自分の道を進んでいいんだ、と。それで、今まで自分が疑問に感じていたものを全部打ち切るというか、環境を変えて、全ての問いに対して自分なりの答えを見出していこうと思って。
ちょうどそれから夏休みに入ったので、淡路島や箱根での、対話をするための合宿に参加したり、今まで行ったことのない関西にも飛び出してみたりと、一人旅のようなことをしました。その時に、全国には本当に幅広い学校があるんだなと知ったし、自分が本当に追い求めたいのは「対話」をすること——対話をしながら他者の意見を受け入れつつ、自分の考えを醸成していくということなのだな、と気づいて。そしてそういうことは、暗記を強要されるような、大学受験のための勉強が多くて「余白」のない現行の学校では難しいのかなと。もっと、自分の感じた疑問——「生きるってなんだろう」とか、「愛とはなんだろう」といった、人間の本質に迫るような問いについて考える時間を持ちたいと思って。
ここで高校の話につながってくるんですけど、校プロで、お姉ちゃんが通信制高校からミネルバ大学に行ったという子の話を聞いて。そこで通信制高校というのがあるんだ、と初めて知って、そんなに興味深い教育をしているなら行ってみたいな、と思って見つけた学校がたまたま、都内の自宅から通える渋谷にあって。schoolの逆読みでLoohcs(ルークス)という、常識から外れよう!みたいな教育を行っている学校だったんですけど、私の求めていた「対話」を通じた教育かつ、リベラルアーツを幅広く学びながら自分で問いをたて続けるなど、常に考える力を養う教育を行っている、通信制サポート校という種類の教育機関で、すごく面白いなと思って転学を決めたという流れになります。
中学3年生のときに校プロを選んでいなかったら転学もしていなかったので、本当に校プロが私の人生を変えてくれたと言っても過言ではないと思っています。
村田:ありがとうございます。「人生を変えてくれた」とのことで、佐野さんは校プロに参加されたことをきっかけに価値観の変遷があったと思うんですけど、まず「校プロに参加する」といったように、はじめの一歩を踏み出すコツのようなものはありますか?
佐野:はじめの一歩を踏み出すっていうのは、越境体験がすごく重要だと思っていて。自分の今までいたコンフォートゾーンから飛び出してみる体験、今までしたことのないような挑戦の機会を誰もが持つことがはじめの一歩に繋がるということがよく言われていますが、まさにその通りだな、だからこそ校プロがあるのかなと思っています。
私も実際ブラジルに行って色々と価値観が変わって、それが校プロ、転学へ繋がって……といった運びがこれまでの人生にあるので、自分の未知の世界に飛び込んでみるという体験は本当に大事だと思います。ただ、その機会が得られるのは本当に偶然というか、その人の属性——経済的な面や地位など、それぞれが置かれた状況によって選択肢が限定されていくところもあるので。校プロとして情報発信することで、越境体験につながるような機会を色々な人に知ってもらって、校プロをきっかけに「このプログラムに参加してみよう!」と挑戦してみる人が増えていったらな、と思っています。「はじめの一歩を踏み出すにはどうしたらいいか」の答えにあたるような活動を行なっているつもりです。
3.Loohcsはどんな学校?
村田:学校の話に戻るのですが、Loohcsという学校には色々な個性のある人たちが集まっているとのことで、実際、どういった個性的な人たちがいますか?
佐野:私が色々なところで「Loohcsいいよ!」などと言うと、いわゆる活動系高校生が多いの? とか、意識高い系がいるところなの? と揶揄されることも多いんですけど、全くそうではなくて。私も自分と同じような人たちがいると思い込んで入ったのですが、アートやスポーツとか、ダンスが好きな人、ラップの大会に出る人だとか、本当に一人ひとり方向性の違う学生が揃っているなという印象です。
それから、普通の学校にはない点を挙げさせていただくと、学校にキッチンがあって、休み時間に芋を買いに行ってスイートポテトを作るとか、放課後にみんなで餃子を食べるとか(笑)。
村田:すごいですね、芋からスイートポテトを作るんですか(笑)! ということは、休み時間に学校の外に出てもいいってことですよね。
佐野:そうです。あとは、朝に弱い学生が多いので、始業時間が10時なんですよ。でもみんな基本、10時には来られないので、一限に間に合う生徒は20人中2、3人とか(笑)。大抵みんな二限から来るっていう。これは通信制高校あるあるかな、とも思いますが。
村田:なるほど。ちなみに佐野さんは、一限に毎回間に合って……?(笑)
佐野:間に合っている……と言っておきます(笑)。
4.SHIMOKITA COLLEGEでの学び
村田:事前アンケートを拝見したところ、校プロ以外の佐野さんの柱として、“SHIMOKITA COLLEGE”があるのかなと思って。調べたところ、関わり方として「住む」というのと「インターン」の二通りあるとのことで、ユニークだなと思ったので、ここについてもお伺いしたいです。まず、SHIMOKITA COLLEGEとはどういうものなのかを説明していただきたいと思います。
佐野:ウェブサイトに書かれている通りになってしまうのですが、“日本初のレジデンシャル・カレッジ”です。居住型の教育施設ということで、具体的には、高校生から大学生、社会人まで100人を超える人が住んでいる大規模なシェアハウスのようになっています。そこで定期的に運営会社であるエイチラボの講演会が開かれて、色々な著名人に来てもらってディスカッションしたり、カレッジ生(SHIMOKITA COLLEGEに住んでいる人)が自主企画という形で哲学的な対話の機会を設けたり、「〇〇について知ってみる会」みたいなものを行なったり。幅広い職種、属性の人が住んでいるので、自分のバックグラウンドをカレッジ内に持ち込むことで多様性の軸を生み出していく営みが繰り広げられています。
村田:ありがとうございます。では、SHIMOKITA COLLEGEをいつ、どうやって知ったのかということをお伺いしたいです。
佐野:実はSHIMOKITA COLLEGEを知ったきっかけも校プロなんです。校プロでは連絡ツールとしてSlackを使っているんですけど、そこに「プログラム情報」というチャンネルがあって。そのときちょうど(前の)学校を辞めようかと考えていた時期だったのもあって、思い切ってエントリーを決めたという形です。私にとっては、学校も居住地も変わるということで、本当に大きな転換点だったなと。
村田:SHIMOKITA COLLEGEに実際入居してみて、最初はどう感じていたか、それがどう変化していったか、というところをお伺いしたいです。
佐野:最初は「学び」という意識が強かったので、レベルの高い大学生や社会人の方々と議論しなきゃいけないのかなと思っていたんですけど、実際はコーヒーチャットという文化が定着していて、一人ひとりが「高校生」という立場にとらわれず対等に話してくださって、自分という人間に向き合っていただけたというのがすごく印象的でした。
あとは、みんなで映画を観よう、とか、クリスマスパーティーといったように、留学に行ったら体験するようなイベントも多かったので、国内留学と言っても過言ではないというほど充実していました。そのように皆でワイワイという時間もありつつ、一人でじっくり何かに取り組んだり、自分自身の人生について内省を繰り返して自分の血肉にしていくという営みだったりと、本当にメリハリのある体験だったなと思います。
村田:ありがとうございます。住むということ以外に、インターンもされているということですが、どういった活動内容でしょうか?
佐野:私は基本的に広報に携わっていて、たとえばSHIMOKITA COLLEGEの良さを広めるために、高校生にインタビューをしてそれをnoteにまとめて発信するといった活動をしています。地域の人やカレッジに興味を持っている人との交流をもっと広げていきたいというところで、イベントの運営などにも同時に携わらせていただいている形になります。
5.印象的な出会い
村田:事前アンケートによると、箱根の合宿に参加されているということなのですが、これはSHIMOKITA COLLEGEの活動とは別のものですか?
佐野:そうです。私の転学の後押しをしてくれたのが箱根の合宿だったんですけど、引きこもりになっていた時にたまたまツイッターに流れてきたイベントで、当時はCo-living Campという名前でした(現在は箱根Neighbor's Campという名称)。本当に全てが自由な環境で、大抵のプログラムではある一定のコンテンツが用意されていると思うのですが、そこでは料理をするにも何をするにも自分次第。時間を組み立てて自分の好きなように活動できる合宿でした。
自分の進路だとか方向性に悩んでいる人もたくさん来ていて、社会人のメンターさんやスタッフさんに将来について相談に乗ってもらうような機会もありました。その時に出会った方から、去年の一月くらいに「陽菜、運営やってみない?」とお誘いを受けて、今度は場の担い手として運営に携わることを通じて、縁や恩といったものを還元していくという体験もしました。
村田:なるほど。(事前アンケートの)「印象的な出会い」の欄に、今おっしゃっていたスタッフさんとの出会いのほかに、SHIMOKITA COLLEGEでのコミュニティマネージャーさんとの出会いが挙げられていたと思うのですが、これはどういった出会いだったのでしょうか?
佐野:その方が今、私の上司のような感じで色々と教えてくださっています。SHIMOKITA COLLEGEには、Residential Programという大学生・社会人向けのプログラムと、高校生向けのBoarding Programという二つの区分があって、Boarding Programのほうに携わられていたのがそのコミュニティマネージャーさんです。プログラムを作られている方で、SHIMOKITA COLLEGEでは、リフレクション——自分の行動や過去を振り返るみたいな時間が多かったのですが、そこでファシリテーターを務められていて。実際に自分の過去に向き合うときに手助けをしてくれた存在でした。
その方はコミュティマネージャーということもあって、中立的な立場でカレッジ生との交流をもっていらっしゃったんですけど、だからこそカレッジ生に対して「縋れるような言葉」を安易に提示しないところが、その方の強みというか、良いところだなと思っています。私は転学をして居住空間も変わっていたので、縋れるものを求めていたというか、揺蕩うような思いがあったんですけど、その中でコミュニティマネージャーさんが、こうするのがいい、悪い、と安直に白黒つけるのではなくて、自分なりの「成解」を追い求めていったらいいんじゃないかと言ってくださったのが印象的です。私なりのプログラム期間の過ごし方を導いてくださったとともに、その言葉自体に救われて、色々なことに踏み出していけるようになったり、悩みを断ち切れたりしたという点で、なくてはならない出会いだったなと思います。
6.インターンで得たもの
村田:SHIMOKITA COLLEGEのインターン生として、どのようなイベントに関わってきたのかということをお伺いしたいです。
佐野:一番印象的だったのは、3周年記念イベントの運営です。これまでのカレッジの歩みを可視化してカレッジ生や卒業された方々に伝えていくこということで、写真のコラージュなど、思い出をまとめることに運営の一員として関わりました。
あとは、カレッジには本当に様々な業種の方が集まっているので、キャリアの多様性を開示して色々な人の進路選択に役立ててもらおうという目的で、キャリアコンパスカフェという、カレッジ内外に向けての進路相談イベントのようなものがありました。そういったイベントの様子を写真に収めたり、来てくださった外部の方の誘導を行なったりという形で携わってきました。
村田:ありがとうございます。ここまでお話を聞いていて、ご自身の過去や現在、未来についてすごくスラスラと話されていると思ったのですが、それはSHIMOKITA COLLEGEのコーヒーチャットなどで色々な人とそういったことを話してきたからこそなんでしょうか。
佐野:おそらくそうだと思っていて、本当にカレッジに入る前後では、自分の言語化能力も全然違ったなと感じています。それまで自分に向き合ってこなかったんですけど、カレッジでの体験を通じて、「なんでそう思ったの?」とか、些細なことでも「なんで?」と問われ続ける環境だったので。既に出来上がっていたパズルのピースがひとつ欠けてしまっていても、それをまた自分の中で見つけて当てはめていくような感覚が、カレッジの中にはあったなと思います。過去の自分が行ってきたことに対する納得感が得られるようになった、という感じです。
カレッジ生たちが投げかけてくれた問いがあったからこそ、言葉を尽くして伝えるということの重要性に気付かされて、今の自分の言語化能力につながったと思います。
7.将来の夢は……?
村田:事前アンケートの「将来の夢」のところに、「この間まではコミュニティマネージャーを志していましたが、今は迷っています」とあるのですが、前までコミュニティマネージャーを目指していた理由と今迷っている理由の二つをお伺いしたいです。
佐野:箱根の合宿で運営に携わったことで、「場を作る」ということがいかに難しいかを痛感していて。人って、集合的に動いていく安直なものではなく、一人ひとりが色々な思いや考えを持って行動しているわけで、それを一つの場に誘っていくことの難しさを実感しました。そこで、場を作ることに関わりたいと考え、コミュニティマネージャーはどういうことをしているのかを知るためにインターンを始めたというのがあります。
初めは、私自身が箱根合宿で転学の後押しをされたように、一つの場によって一つの人生が変わってしまうこともあるという、ある種の奇跡のようなものを生み出せる空間って素敵だな、私も場づくりを担っていきたいなと思っていました。けど半年のインターン期間を通じて、私はそこまで向いていないんじゃないかな、「自分が」やるべきことなのかな、と感じるようになってきて。コミュニティマネージャーを目指しても、自分らしく場づくりをしていける未来が見えなくなったというのがあって、今はコミュニティマネージャーは志していません。
今は、本当に色々な選択肢が自分の中にあるなと思っていて。今の自分に見えている範疇で進路を決めるより、もっと自分で模索することが必要だなと感じていて、現時点では「これだ!」と断定できる夢はないです。
鈴木:では、今後の展望というか、これからの活動でどういうことをしていきたいか、などはありますか?
佐野:1月からはインターンもなくなってしまったので、これからは校プロの活動に一点集中していきたいです。校プロの活動といっても、記事の執筆だけを続けていくというわけではなく、3月くらいからはNPO法人として動き始め、新しい事業も行っていきたいと考えています。中高生に向けた機会格差の是正を増強していく取り組みにできたらなと思います。あと個人的には、受験勉強があるかな、と。
尾熊:受験勉強といえば、海外大学を目指されているとのことでしたが、具体的にもう行きたい国や大学は決まっていたりしますか?
佐野:実は、SHIMOKITA COLLEGEで言葉の重みに気づいたということを先ほどお伝えしたのですが、そういった中で日本語って美しいな、と感じるようになって。海外大学に行くのではなくて、留学をすればいいかなと今は思っていて、日本の大学に進むつもりです。その志望校も今はちょっと揺らいでいるところなので、発言は控えておこうかなと思います。
8.「弱さ」とはなにか
村田:最後に、事前質問シートの「〇〇とはなにか」という項目で書いてくださった、「弱さとはなにか」についてお伺いしたいです。
佐野:弱さというのは、これまで人に指摘されてきたものなど、言動に顕著に現れるものだけではなくて、自分の中だけで認識している精神的な特性もあると思うんですけど、私の場合「見て見ぬふりをすること」が挙げられると自覚しています。私は人目をけっこう気にするところがあって、人の喜ぶようなことを言ったりだとか、自分の本心にはない言動をとることがたまにあるんですけど、それって本質的な「自分」ではないというか。なんだろう、自分に嘘をつき続けているような感覚があって。自分の本心を見て見ぬふりをすることは、本当の自分に対しての酷い仕打ちなんじゃないかなと思うことがあります。まだ自分の中でもうまくまとまっていなくて、思考を整理する時間になってしまって申し訳ないです。
村田:いえいえ、ありがとうございます。
🌻
《ライターあとがき:尾熊》
佐野さんの事前質問シートの経歴から、彼女はもともと積極的で自分の意志を強くもって生きてきた人なのだろうと思っていました。しかし佐野さんが自分の考えや可能性を広げるために行動するようになったのは、ブラジルでの生活や校プロへの参加、転学、コミュティマネージャーの方との出会いなど、本当にたくさんの出来事が積み重なった結果なのだということを知り、人生を語っていただくことの奥深さを感じました。
また、箱根の合宿やコーヒーチャットといった多くの「対話」の経験により培ってきた佐野さんの言語化能力や、比喩表現の秀逸さに圧倒されました。言葉を尽くすことの大切さ、日本語の美しさといったことを改めてじっくりと考える機会にもなり、お話を聴くことができて本当によかったです。ありがとうございました。
今後も様々な自分語りをお届けしていく予定です。
主に高校生を対象として、ひまわりの種会議はインタビューを行います。興味のある方は是非、以下のフォームよりお申し込みください。(メールアドレスは収集されません。)
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