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第六十一話 ウェイター業務とスカウト

初日の仕事を終え二日目の朝。昨日は帰ってきてすぐに寝てしまったのだが今までの職人の癖で朝に起きてしまった。足がパンパンになっていて筋肉痛だった。昨日の仕事の辛さでもう行くのやめようかと一瞬は考えた。だがここで行くのを辞めてしまっては何の意味もないと考え直しシャワーを浴びて目を覚ました。

昨日のウェイター業務は自分で言うのもなんだが割と廻せていたと思う。何度もコールがあがることもなく呼ばれても一回くらいでは対応できていた。どれくらいの期間が経てば昇進できるのだろうか?そんな事を考えていた。

あとスカウトには興味があったし根拠のない自信があった。田舎にいた頃からナンパは毎日のようにしていたし女の子と話すのは好きだった。スカウトで実績をあげれば昇進も近くなるのではないかと考えた。ならば今日のように早起きして早い時間に出勤しスカウトに出ようと決めた。私はまだカギを貰ってはいなかったので早い時間にスカウトに行き、出勤時間の16時になったら店に向かえばいいのではないかと考えた。それならば開店準備も出来るし誰にも迷惑が掛からない。スカウトをすることが楽しみになってきた。

スカウトをする上での大事な事や注意点を分かっていなかったので今日は定時の16時に出勤することにした。今日店に行ったらスカウトについて聞いてみようと思った。遅刻しないように家を出て16時前には店に着いた。店はもう開いていて店内に入っていくとウェイター長がいて「来てくれてよかった」と笑いながら言った。「おはようございます」「これからスカウトですか」と聞いた。「うん、開店準備よろしくね」と言われたので、「わかりました」と答え、早い時間にスカウトに出たいことを話した。

「凄いやる気だね」とウェイター長は言った。スカウトした子が入店するまでは自分が連絡を取り管理する事、体験入店や本入店に繋がりそうなときは、支配人か店長に連絡し面接をしてもらう事、自分が入店させた子に関しては自分の担当として出来るだけフォローする事、とこの三点が大事な事だと教えられた。あとはスカウト同士で揉め事にならないように細かい注意事項やマナーについても教えてもらえた。

「ウェイター長は何人くらい女の子入れたんですか?」と聞いてみると「まだ入れたことないんだよね」とウェイター長は言った。「スカウトの実績で昇進することが多いから頑張らないといけないんだけど」やはりスカウトは大事な事なんだと分かった。明日から2時には出勤してスカウトしようと決めた。

店の掃除、テーブルセット、おしぼり巻き、オーダー仕入れを済ませ18時になっていた。開店準備は2時間あれば終わることを確認した。開店まで少し休憩した。店長も出勤し、支配人たち4人もスカウトから戻ってきた。支配人が「スカウト出たいんだって」と聞いてきたので、「開店準備には支障がないように早く来てやってみます」と答えた。「そうか、大分やる気あるみたいだからカギ預けるよ」と言ってくれた。カギを貰えれば、早く着て準備をしてからスカウトに行くことも出来る。「ありがとうございます」と言った。

キャストが出勤してきた。私は一人一人に「おはようございます」と挨拶をしたが、まともに返してくれる子はほとんどいなかった。やはり対等に話をするにはせめて主任クラスにならなければ駄目なんだと気付いた。スカウトを頑張って早く昇進しようと心に決めた。

営業中、足は筋肉痛だったがやる事は分かっていたので、昨日よりは要領よくこなすことが出来た。物を乗せるトレンチも指を立てて持つことが出来るようになった。昨日は平手で持っていたので凄い進歩である。そんな様子を見て店長も「様になってきたな」と褒めてくれた。灰皿交換、アイス交換、オーダーやボトルを持って行ったり、スタンバイセットも昨日と比べると断然スムーズに出来るようになっていた。

営業が終わり家に帰る。足の筋肉痛に加え腕もパンパンになってしまった。やはり指を立ててトレンチを持つのは大変だった。だがこんな事ぐらいでへこたれてはいられない。明日からは14時に出勤してスカウトをするのだ。スカウトで絶対に結果を出すと決めていたし自信もあった。

次の日14時に店に入り開店準備をして16時にはスカウトに出た。最寄り駅の駅前でスカウトをすることにした。「今時間ありますか」「キャバクラのスカウトなんですけど」「ちょっとだけお時間良いですか」等々、無視されるのを恐れずにどんどん声をかけて行った。「もし気になったらこの番号に電話して」店の空名刺に名前と携帯番号を書いてそれを渡した。近くのデパートにも行ってみた。洋服売り場を見て周り、若そうな店員さんにも声をかけた。「キャバクラのスカウトしてるんですけど興味ありませんか」店員さんは逃げることが無いのでゆっくり話せる。ナンパでもよく使った技であった。

18時になって店に戻った。今日は楽に100人以上には声をかけた。名刺も30枚以上は渡すことが出来た。支配人から「どうだった初スカウトは」と聞かれた。「片っ端から声かけまくりました」と答えた。すると支配人は笑って「頑張ってね」と言った。

営業が始まる。足の筋肉痛はだいぶ治まってきた。指を立てているので手首のあたりがパンパンだが昨日よりは安定感も出てきた。初日と比べるとホールの様子も良く見れて、あそこの席がアイスが無くなりそうだとか、あそこのテーブルは灰皿交換だ、等が分かるようになっていた。店長も私の様子を見て少し驚いたようで「頑張ってやってるな」と声を掛けてくれた。

一週間、二週間と続けていくうちに女の子と連絡先を交換したり、名刺を渡した子から連絡があったりするようになった。なんとか面接に来て入店してもらえるよう丁寧に説明した。その日も女の子から電話があり「体入してみたいんだけど」といわれたので、すぐに支配人に電話をし面接の日時を決めた。「凄いじゃん、スカウト向いてるんじゃない」と支配人は言ってくれた。それから少しずつだが面接や体入が入るようになってきた。

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