第六十二話 スカウトの実績
私が入社して丁度一ヵ月が経った頃、月に一度決起集会というのがあった。ホテルのミーティングルームのようなところを借りて各店の売り上げ報告や、来月の売り上げ目標をマネージャーが話したり、社歌を歌ったり社訓や社是を暗唱したりした。昇進者の辞令の発表もこの時にあった。辞令の発表では私の名前もあった。私は一ヵ月でウェイター長に昇進した。昇進するには店舗責任者が推薦状を本社に提出することが条件となるようだった。店長は私の仕事を認めてくれたので無事昇進することになったのだ。
店舗に戻ってから皆に「おめでとう」と言われた。私は「ありがとうございます。スカウト頑張ってもっと上を目指します」と言った。一ヵ月が経ってスカウトも結果が出てきていた。数人が入店して、体入や面接も予定も数人分予定に入っていた。皆がおめでとうと言ってくれる中で、ウェイター長は微妙な表情をしていた。私に役職で追いつかれたのもあるだろうし、追い抜かれそうという危機感もあったのではないかと思う。ウェイター長はスカウトが苦手であった。歳は私より10歳も上であったが、真面目そうな感じで若い頃ナンパなどもしていなかったであろう感じに見えた。
副主任も「俺も追いつかれちゃいそうだな」と笑いながら言っていた。
スカウトでは支配人の次に私が結果を出していた。支配人はスカウトが上手く週に3~4人は面接に連れてくるのだ。私は支配人から「スカウト頑張れば昇進あるからもっと頑張れよ」と言って期待されていた。その期待に応えるためにも、自分の目標のためにももっと頑張らなければと気を引き締めなおした。
ある日の営業中、その日は見回りで次長が店舗に来ていた。私はいつものようにウェイター業務をこなしていると次長に呼ばれた。次長と店長がいる所に小走りで行くと、次長から「明日から○○店に行ってもらうから」と言われた。移動はこんな急に言われるものなのか、と思ったが、「わかりました」と答えた。店長が「○○店はグループで一番売り上げがある店だから頑張れば上に行けるぞ」と励ましの言葉をくれた。私が頑張っていることが上の人達の耳にも入っていることが私には嬉しく感じた。
次の日移動先の店舗での初めての仕事。カギは持っていなかったので16時に店に向かった。すると三人の従業員がいて「おはようございます」と言われた。彼らはウェイターだった。店も広く売り上げもあるこの店舗には三人もウェイターがいるのだ。私もウェイター長だから、4人でウェイター業務をこなすことになるようだ。開店準備は私がする必要は無くなっていた。準備はウェイター達に任せて私はスカウトに出ても良いという事だった。
早速新店舗でのスカウト業務を始めることにした。昨日までの店舗と比べてこっちのほうが人の流れもありスカウトしやすい環境だった。毎日100人以上の女の子に声をかける。連絡先を聞いたり、名刺を渡したりは毎日たくさんの人数をこなせるようになっていた。やはりナンパをしていた経験がいきているなと感じた。
○○店にはウェイター3にの他に主任、副支配人、支配人、店長がいた。主任がメンバー通しとフラワーをやり、副支配人と支配人がラッキーを担当していた。主任から「一人じゃきついから早く上がってきてよ」と言われた。副主任になれれば私もメンバー通しとフラワーを担当できるようになる。ウェイター業務では、もう筋肉痛などはなくなっていたが、手首の痛みはとれず、腱鞘炎になってしまうのではないかと心配もしていた。正直ウェイター業務からはもう解放されたいという思いもあった。
スカウトは毎日14時に出勤して欠かさずに頑張った。二ヶ月がたったころには、週に2~3人は体入か面接に連れてこられるようになっていた。駅前やデパートで毎日声をかけまくった結果が徐々に出始めているのは自分でも感じていた。
二ヶ月目の決起集会、私は副主任の辞令をもらった。二ヶ月で副主任は中々のスピードだと言われた。店舗に戻ってから店長に「今日からメンバー、フラワーをやってもらうから、主任に良く教えてもらってな」と言われた。
やっとウェイター業務から解放されることになり私は嬉しかった。「スカウトの結果を出しているから推薦状出しておいたんだ」と店長は言った。「ありがとうございます、もっと頑張ります」と答えた。
すぐに結果は出ないが連絡先を交換したり名刺を渡しておくことによって、後につながっていくという事を分かっていた。そこはナンパと違う事であるがその場で成功させなければいけないナンパと違ってスカウトの方が結果を出しやすいという面もある。毎日毎日100人以上の女の子に声をかけるということを自分の日課にしていたのが上手く回り始めていた。
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