中世の修道女って禁欲主義⁉︎ヒルデガルトに影響を与えたアンカライトとは? 𝕳𝖎𝖑𝖉𝖊𝖌𝖆𝖗𝖙𝖊𝖓 𝕹𝖔𝖙𝖊
聖ユッタと聖ヒルデガルトの出逢いを含めた事から【聖ヒルデガルトの未来の行動につながる「反禁欲主義」や「ウーマンリブ」の思想】が垣間見えてきます。
聖ヒルデガルトの存在は、当時の女性にとっても、現代の女性にとっても、真の意味でのロールモデルであり続けています。
彼女は、あの厳しい社会においても女性ができることの限界をはるかに超えた挑戦をしたからです。
当時の教会では、“女性の精神は知識のために作られたものではない”と考えられていました。
また、聖ヒルデガルトは禁欲主義ではなく、楽しい生活を送るために十分な睡眠、食事、喜びを求めました。
聖ヒルデガルトは[修道女たちの生活万般における極度の禁欲主義を批判した]と言われています。
それは、聖ユッタと共に過ごした日々と聖ユッタの死が影響しているのではないかと感じています。
聖ユッタも実践していた「アンカライト(anchorites)」 (女性: アンカレス)について追求していきたいと思います。※アンカライトまたはアンカレットと呼びます。
聖ユッタはヒルデガルトと違い、中世には多くのキリスト教徒が体罰や鞭打ちを伴う禁欲主義を実践していました。
中世のヨーロッパにおいて、特に女性は、社会から永久に身を引き、教会の一室に一人で閉じこもって生活していました。※上記の写真のような独房の一室です。
アンカライト (女性: アンカレス)は、いつでも元に戻ることのできない妥協のない囲い込みの生活をしていました。逃げようとした人々は力で戻されました。一部のアンカライトは独房で火傷し、海賊や略奪者が自分の町を略奪しているときでさえ、離れることを拒否したくらいだと言います。アンカライトは質素な食事をとり、瞑想的な祈りと他人のために執り成しの日々を過ごしました。彼らの排泄物は、おまるで管理されていました。アンカライトにはいくつかの小さな部屋や庭がありました。アンカライトの基本的な暮らしを支えるために、召使たちがいたと言います。大体多くても二人の召使たちがおり、食物と水を提供し、老廃物を除去するためにいたことで知られています。
イギリスやヨーロッパ大陸の「アンカライト(anchorites)」 (女性: アンカレス)と呼ばれる女性たちのための手引きや、「アンカライト(anchorites)」 (女性: アンカレス)と呼ばれる彼女たちが書いた文章は、彼女たちの生き方を説明し、彼女たちの反省点を語っています。
では、中世の女性たちは、孤独との付き合い方について何を教えてくれるのでしょうか。
アンカライト (女性: アンカレス)たちが狭い独房に入ることを選んだのには、さまざまな理由がありました。
中世の宗教文化では、【他者のために祈りを捧げる生活が社会を支える重要な役割】を果たしていました。
隔離されることで、女性はキリストへの愛を表現し、祈りや助言を通して信者仲間に奉仕する力を得たのです。
アンカライト (女性: アンカレス)は、煉獄(カトリック教会の教義で、この世のいのちの終わりと天国との間に多くの人が経ると教えられる清めの期間)にいる死者のために執り成す「超能力」を持っているとさえ言われていました。
さらに中世末期には、聖職者ではない平信徒の信仰が盛んになりました。
アンカライト (女性: アンカレス)の生活は、こうした信心深さを表現するための選択肢のひとつであり、修道女の生活よりも個人的な思索(と孤独)の自由度が高いものでした。
また、[アンカライトの手引き]に書かれている警告は、あまり精神的でない動機を示唆しています。
隠遁生活は、逆説的に、アンカライトを地域社会の中心に位置づけ、宗教的な有名人に変えることができたというのです。
彼らの独房は、賑やかな都市の交通量の多い道路に面していることが多く、銀行や教師の休憩室、地元のゴシップの貯蔵庫のような役割を果たしていました。
13世紀の中世イギリスの女性アンカライトのための手引き『アンクレン・ウィス』は、〈アンカライトに快適さを求めてはいけない〉と警告しています。アンカライトは、自分が囲われたのは自分のためだけではなく、他の人のためでもあることを思い出すべきだとしています。
そして、「病める者、悲しき者をすべて心に集め」、「憐れみの心を持つ」ように言われています。
孤立することで、アンカライトは祈りによって「すべての信者を支える」と言います。
[アンカライトのための手引き]によると、〈誘惑に負けたり、祈りや瞑想から遠ざかったりしないように、実際の部屋の窓を守ることで自身の五感を守る必要がある〉と述べています。
「心の乱れは、外界で見たり聞いたり、味わったり嗅いだり、感じたりしたものを通してのみ心に入ってくる」。
外界は人の内面世界を動揺させるとも。
オランダのアンカライトであったシスター・ベルトケンSister Bertken (1427-1514)は、この心の混乱を詩にしています。
世界はその力で私を捕らえ
その多様な罠によって
私の力を奪った。 Sister Bertken (Zuster Bertken)
いくつかの[アンカライトのための手引き]では、アンカライトの友人が注意深く“アンカライトの住む窓”を守り、ゴシップや嘘を広める訪問者の出入りを拒むことを勧めています。中世においても、未知の物事・深く知らない物事を既知の物事に当てはめて推論することで対応していたことが伺えます。
※この窓はアンカライトにおける五感も指しているとも言われています。
イギリスのアンカライトであった ノリッジの聖ジュリアン(1343年〜1416年)。
彼女は、読者に【自分の弱さを認めることこそが強みであることを提案しています。彼女は、14世紀後半から15世紀前半に書いた『A Revelation of Love(愛の啓示)』の中で、『苦しみや困難に負けることはない』と断言しています。
キリストは、『あなたは動揺してはならない、悩んではならない、苦悩してはならない』とは言わず、『あなたは打ち負かされてはならない』と言われました。
イギリスのアンカライトであった聖ジュリアン・オブ・ノリッチ(1343年〜1416年)は、読者に【自分の弱さを認めることこそが強みであることを提案しています。彼女は、14世紀後半から15世紀前半に書かれた『A Revelation of Love(愛の啓示)』の中で、苦しみや困難に負けることはないと断言しています。
キリストは、『あなたは動揺してはならない、悩んではならない、苦悩してはならない』とは言わず、『あなたは打ち負かされてはならない』と言われました。
ジュリアンは、どんな危機にあっても感情的な混乱を経験したとしても最終的にはそれに打ち勝つことを約束しています。
このジュリアンのいう約束は、現代のサバイバル心理学と類似しています。危機的な状況に適応するためには、困難な状況が今の自分の人生を形成していると認めることが重要です。しかし、それと同時に、危機以前のより良い生活スタイルに戻るために最大限の努力をしていることも忘れてはなりません。心身ともに弱っていることを認識し、他人や自分を守るために行動することで、危機を乗り越えることができるのです。
そういうことを言いながらも、やはりアンカライトの生活は厳しいものです。困難の打ち勝つためについて手引きには書かれています。
アンカライトのためのマニュアルを書いた人たちは、正気を保つ方法についても考えました。
忙しくしていれば、正気を失って、庵を抜け出すために壁に登ってしまうこともありません。
イギリスのシトー会修道士、アボット・アエルレッド・オブ・リーヴァルクス(1110-1167)は、『隠遁者のための生活規則』の中で、アンカライトにこう語っています。
"怠惰は...静寂への嫌悪感と独房への嫌悪感を生む。"
正気を保つためには決まり事が大切と言います。
アンカライトは、一日のうちの決まった時間に、一連の祈りや詩篇、その他の聖書朗読を唱えました。
現代のサバイバル心理学によれば、危機に直面したときには、問題や時間を分割して管理することが重要であり、次のステップよりも先を見ないで、一つ一つのステップを実行することが重要であると言います。
また、手芸やガーデニング、読書など、精神的に集中できる趣味を持つことも、昔から行われてきた独りぼっちの解消法です。
アンカライトのためのガイド『アンクレン・ウィス』では、貧しい人のための服を縫うことや、教会の法衣を縫うことを勧め、夢中になることで誘惑から心を守ることができると断言しています。また、猫を飼うことも推奨しています。
結局のところ、心理学によれば、目的を持って管理可能な指示された行動を行うことは、正気を失うような危機に瀕したときに重要です。
現在の新型コロナウイルスにおける自粛生活に関しても似ている部分があるかもしれませんね。アンカライトから学ぶ心理があるような気がいたしますね!
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