「つらいときは、思いっきり泣けばいい。悲しみを我慢してはいけません。ただ、うんと泣いた後、ちょっと笑ってほしい。」　　　　

　　　　　　瀬戸内寂聴

　瀬戸内寂聴さんは、1922年に生まれ、若い頃から作家として活躍しましたが、その道の中で様々な人間関係の葛藤、離婚や不倫、家庭崩壊といった苦しみを経験しました。

　彼女は、世間的には「波乱万丈な人生」を歩んできたと言われています。特に結婚生活や恋愛において、彼女が経験した激しい感情の起伏は、作家としての創作活動に大きな影響を与えましたが、同時に彼女自身を深く悩ませ、心に大きな痛みをもたらしたのです。

　40代半ばで突如仏門に入り、天台宗の尼僧となるという決断をした背景には、彼女自身の苦しみや迷いを乗り越えたいという強い思いがありました。

　僧侶としての活動では、彼女は多くの人々の悩みや苦しみに耳を傾け、励まし続けました。その経験が、この言葉に込められた「悲しみは我慢せず、ありのまま受け入れること」の重要性を裏打ちしています。

　仏教では、人生の苦しみ（四苦八苦）を避けられないものと考えます。苦しみの中には「愛別離苦（愛する者との別れの苦しみ）」や「怨憎会苦（憎む者との出会いの苦しみ）」が含まれており、誰もがこのような悲しみを経験します。

　瀬戸内寂聴さんは、仏教のこの教えを深く理解し、悲しみや苦しみを無理に消し去るのではなく、それを受け入れることが重要だと考えました。

　そのため、「思いっきり泣けばいい」という言葉は、悲しみを我慢せずに感じ、表現することが、感情を健全に処理するために必要なプロセスだという意味を持っています。

「泣いた後、ちょっと笑ってほしい」という部分には、瀬戸内寂聴さんの深い慈悲心と仏教的な希望が込められています。

　仏教では、悲しみや苦しみの中にあっても、希望や前向きなエネルギーを見出すことが大切だとされています。

　悲しみに溺れてしまうのではなく、その感情を表現し切った後には、少しでも自分を励まし、未来に向かって一歩を踏み出すことが大切です。

#瀬戸内寂聴 #波乱万丈の人生 #仏教
#四苦八苦 #慈悲心 #愛別離苦