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[漫画紹介] ひきこもり+女性 +災害避難+東京ゼロメートル地帯 『健康で文化的な最低限度の生活』

本記事内の漫画画像は、柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』(ビッグコミックス)12巻から、著作権法32条1項の要件を満たす引用として使用しています。

伊勢湾台風以来という大型の台風と目された台風10号が列島を縦断しています。当初の予報よりどんどん遅くなり、風の勢力は弱回ったようですが、遠く離れた場所でも各地で大雨が降り交通機関も計画運休等が相次いでいます。
私も参加予定だった厚生労働省のひきこもりに関するディスカッションイベントが中止になったので、急遽思いついてnoteのアカウントを作ってこの記事を書いています。

8月31日(土)愛知県名古屋市で開催を予定しておりました『ひきこもりVOICE STATION 全国キャラバン in 愛知』ですが、台風10号の影響により、残念ながら開催中止とさせて頂きます。進路や速度の予測がつかない大型台風であり、公共交通機関への影響やご来場の皆様の安全面を考慮しての決定ですので、何卒ご容赦頂ければと存じます。

https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/event/


漫画『健康で文化的な最低限度の生活』

『健康で文化的な最低限度の生活』という、生活保護行政(ケースワーカー)の仕事を丹念な取材の基に描いた漫画があります。ちなみにタイトルは憲法25条の有名な一節ですね。
私は、学生時代から鬱でひきこもりになっていた時期があり、将来働いて満足に暮らしていける自信もなく、ホームレスや生活保護も遠い世界のことではないな、と漠然と思っていました。
また、国税徴収法について専門的に勉強していました(税理士試験の同科目に合格)ので滞納処分や差押などの手続きを通して、税金と公務員の仕事について考えることもありました。


最新の単行本12巻では、ひきこもり+女性 +災害避難+東京ゼロメートル地帯という、時流に沿ったテーマを取り上げた新章に突入しました。
(ちなみにこの巻の前半までは、生活困窮者の搾取ビジネスを扱っています。福祉として生活困窮者の支援が行われる一方で、そこから公金を巻上げようという悪質な業者の問題も付いてまわります。また、別の機会に取り上げようと思います。)

国内のひきこもり人口は、2022年の内閣府調査で、15歳から64歳の生産年齢で2%余りにあたる146万人と推計されています。そして、従来は男性中心と言われてきましたが、女性は主婦や家事手伝いなどと呼ばれ家庭内にいることに対する圧力が低くこれまで表面化していなかっただけで、男性と同等の数いる実態もわかってきました。


作中では、東京に大型の台風が上陸し広域避難が呼びかけられる中、避難所で対応する区役所職員の主人公は、自宅に避難できない娘がいると高齢女性の訴えを聞きます。

東京東部の江東5区(江東区・墨田区・足立区・葛飾区・江戸川区)は全体が地盤沈下により東京湾の海面よりも低い「海抜ゼロメートル地帯」となっており、水害時に水没する可能性が指摘されています。

https://www.nhk.or.jp/bousai/articles/21695/から引用


娘について、区役所の総合受給照会で調べますが、これまで行政の支援を受けた記録は全くないようで把握できません。

作中では主人公が独断で探索に向かいますが、大規模災害時には行政のマンパワーも圧倒的に不足する中で、現実には自主的に避難できないひきこもりの人は苦境に立たされることは予想に難くありません。東日本大震災や、今年元日に起きた能登地震でもそうした事例があったことがわかっています。

私も、鬱で1週間以上風呂に入れないような生活にしょっちゅうなっていましたから、他人事ではありません。東日本大震災以降は、「あー、今地震がきたら終わりだな。」と時々実際に思っていました。さりとて行動を起こす気力はなく、危険が目の前に迫っていても諦めるしかない、座して過ぎ去るのを待つしかないという心境はわかります。

また、全体の奉仕者である公務員は公平性が求められるため、特定の住民のみを優遇することも問題視されます。実際の避難所の運営でも、支援物資を全員に行き渡る数量がないと配ることができない、という話も聞いたことがあります。

謝辞の多さが丹念な取材を窺わせます。

ストーリーはまだ序章で、12巻ではひきこもり女性が発見されたところまでです。続きは連載中のようで、注目しています。


災害時にひきこもりはどうなるのか

ひきこもり家族会の全国組織KHJの最新の会報でも、ひきこもりと災害をテーマに扱っています。
ダウンロード版が500円で購入できますので関心のある方は下記リンクから。


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