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(短編小説)我輩は……

我輩は猫である。名はまだ無い。
どこで生まれたかは釈然としてゐるため、先輩とはそこが違ふ。

飼ひ主の名は、流石に珍野なにがしでは無いが、最近くしゃみに悩まされ始めてゐる。
彼は花粉症のbaptism洗礼を受けたらしい。
しかも、водкаウォッカをらっぱ飲みできる蟒蛇ウワバミである。

先輩は酒で鬼籍に名を連ねた。
同じてつを踏まぬためにも、何かしらの対策が必要だらふ。

とりあえず、酒瓶でも落として割ってみんとてみたが、我輩の力ではumともsumoともうんともすんとも云わせられぬこと分かりさうらふ。
そもそも、仮に落とせても追い出されるのが関の山。
今年の冬は寒し。
どうせ『とうし』するなら、『京都の花札屋』の株でも買ひたいものだ。

さて、困った。

我輩が望みたるは、飼ひ主の知人たるキャリアウーマン殿に引き取つて頂くのが、betterである。
ちなみに、我輩は♀である。

Bestは勿論、飼ひ主に取り憑きしBacchus酒の神様にお帰り願ふことなりて……。

ガチャリ……。
飼ひ主のご帰宅である。

おかしい?
あの凄まじきvine葡萄酒の酸味とalcoholアルコールの臭みが鼻を突かぬ。

居間に姿を見せると、直ぐに台所へと馳せる。
棚を開け、водкаを手にした。

呑むのか?

否、呑ませた。
排水溝に。

福澤大先生に御足労願ひし、あのводкаを。

キャリアウーマン殿もそれなりに呑まれた筈……。
つまりは振られた訳であらう。

我が身の安堵にホッとはするが、飼ひ主の幸せも我輩の幸せが如しなり。

さて、明日のお天道様はどちらにかぶきますやら。

―――
夏目漱石大先生、済みませんでした!

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曳舟次郎
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