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★鉱石の囁きを閉じ込める物語#01

シトリンの囁き

天井まで埋め尽くす数多の魔導書に赤みを帯びた透明度の高い橙から淡い檸檬色でグラデーションを作る無数の歯車が絡み、物理法則を超えて互いの存在領域に干渉しあう私の研究室。

手元の砂時計が落ち切ると同時に、実験装置の一角に仕掛けた夕陽色に染まる水晶硝子の花びらからとろりと甘い蜜がしたたり落ちた。
蜜はすぐに小さな多面体の結晶となり、硝子の受け皿の中でコトコト音を立てながら転がる。

長い長い研究の果て、重ねてきた途方もない時間の先で、ようやくソレが実を結んだことに安堵と歓喜がじわりと私の中に広がっていく。

『これで富も名声もキミの思いのままだね』

私の耳元で、時と知性を司る精霊がうっとりと囁いた。
まるで悪魔がもたらす誘惑のような物言いに、ついくすりと笑みがこぼれる。

「そんなものじゃ私は満たされないよ」

私が欲しいものはひとつだけ――
もう一度あの人と過ごす幸せな時間を取り戻すことだというのに、この精霊ときたら私の魂の底から生まれる願望を信じようとしない。

「でも魅せてあげるわ、あなたとの契約通り、あなたの知らない景色をね」

書物と歯車の狭間で灯るランタンに先ほどの結晶を一粒投じて、魔力をまとわせた指先をそっとランタンの淵に這わせる。

刹那。

永遠を期限としたはずの次元管理者が施した呪は解かれ、砂の城が崩れるように脆く崩れ、消え去った。
固く閉ざされていた『扉』の向こう側から、湧き上がる歓喜の声が、確かにこの耳に届く。

禁忌によって隔たれた、あなたとの再会まであともう少し。




◆2-23-2 シトリン
キーワード:幸福・繁栄・富・希望・勇気

Copyright RIN

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Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画でした。

オーダーメイド物語としては初のお手紙方式(郵送)でお届けです。
運命のダイスを転がした結果の鉱石をモチーフとした、少し不思議な500文字の物語。
物語とリンクする形で、鉱石イメージのインクを使い、
ガラスペンでミニカードに「鉱石の囁き」を綴っております。
*ミニカードの内容はこちらでは非公開としています


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